キャンパスでの新型コロナウイルスワクチン接種について、各大学での準備が進んでいる。7日には慶応大が21日の開始を発表、医学部や病院があり、ノウハウを持つ大学が手を挙げる例が目立つ。ただ、すでに自治体での接種などに人材を派遣していて、“自前”の医師らがいる大学でも学内接種に向けた「人繰りが難しい」との声が聞こえる。医療従事者の確保が課題となるが、国の「人材バンク」からの派遣なども活用して、各大学は体制構築を進める。
21日から学内接種をスタートさせる国の方針にいち早く反応したのは医学部や病院を有する大学だ。慶応大は学生や職員ら約5万人を対象に、21日に学内接種を開始。医療系3学部や病院といった学内の医療従事者だけでなく、関連病院や同窓会組織の協力を得て、外部からも人材確保を進める。
また大阪大は約3万6千人を対象に21日にも、運営法人が統合した大阪府立大と大阪市立大は、計約1万7100人を対象に両大学で21日から始める。先行実施候補に挙がっていた7大学のうち、広島大も約1万8千人を対象に21日から実施。いずれも学内の医療従事者らが打ち手となる。近畿大の対象は約2万8千人で、終了後は地域住民への拡大も検討する。
ただ、現場では人材枯渇への懸念が根強い。先行実施の候補に挙がった東北大の関係者は「高齢者接種に人を取られているため、今でも人繰りはぎりぎり」と指摘。“自前”の医療従事者を有する大学でさえ、21日以降、どの程度の体制でスタートを切れるかは不透明な場合もある。それでも、ワクチン接種の加速化が期待できるため、「学内で行う意義は大きい」(東北大関係者)としている。
一方、会場だけの提供を予定している大学も含め、接種に向けた人材確保が可能というのが国の見立て。コロナ禍を機に整備が一気に進められた医療従事者に関する国の「人材バンク」を各大学に紹介するなど、現場に広がる懸念を払拭したい考えだ。
文部科学省では、大学でのワクチン接種をサポートするための作業チームを省内に設置した。(1)自前で医療従事者の確保が可能(2)医療系の学部はないが栄養学などの関連学部があり一部の医療従事者の確保が可能(3)会場の提供のみ可能-など、作業チームでは学内接種に関するいくつかのモデルを作り大学を支援する方針。7月には始まる夏休みを活用して接種を一気に進める構えだ。