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ワクチン打てば大丈夫? 接種加速も問われるマスク必要性、100%は感染防げず

 全国的に大規模接種会場などが相次いで開設され、新型コロナウイルスのワクチン接種が加速する中、接種後のマスクの必要性が改めて問われている。ワクチンを接種しても完全に感染を防げるわけではなく、実際に接種後の感染例も確認されている。専門家は「ワクチンを打ったら、何をしてもいいわけではない。引き続き、マスクなどの感染対策は必要」と訴える。

 「正直、マスクをもう外したい。息苦しいし、買うのにお金がかかる」。自衛隊が運営する東京・大手町の大規模接種センターで、1回目の接種を終えた東京都清瀬市の自営業男性(67)はこう嘆いた。ただ、1回目を接種済みの人はまだ国民全体の1割程度。男性は「話し相手が接種しているかどうか分からない以上、これからもしばらくは着けていようと思う」と語った。

 ワクチン接種で体内に免疫ができれば、新型コロナに感染しにくくなるほか、感染した場合にも症状が軽くなることが期待される。厚生労働省によると、国内で使用中の米ファイザー製は95%、米モデルナ製は94%の高い発症予防効果があり、重症化を防ぐ効果も確認されている。

 一方、両社製ともに2回の接種が必要で、十分な免疫ができるまでにファイザー製は2回目の接種から1週間程度、モデルナ製は2週間程度かかるとされる。また、2回接種した人がコロナに感染した例が全国で複数報告されている。

 厚労省はワクチン接種後もマスクの着用以外に、3密(密閉・密集・密接)回避や手洗いの徹底など現行の感染予防対策の継続を要請。同省予防接種室の担当者は「ワクチンは発症を予防する効果が100%ではない上、ワクチンが他者への感染をどれだけ抑えられるのかがまだ解明されていない」と説明する。

 国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生学)も「ワクチンを打ったら、すぐにコロナ前の生活に戻してもいいというわけではない」と指摘。感染力の強い英国由来の変異株は、ワクチン接種が進んでいない40~60代でも重症化しやすいとして、「40代以上の7割程度が接種し終わるまでは注意が必要」と話す。

 人口の約4割がワクチン接種を終えた米国では、疾病対策センター(CDC)が5月中旬に「ワクチンの接種完了から2週間以上たった人は屋内外を問わず、マスク着用は原則不要」とする新指針を公表した。

 米国ではマスクを外せるのに、日本ではなぜ必要なのか。和田教授は「米国は(日本より2カ月早い)昨年12月に接種が始まり、接種が進んでいる。日本で同じ対応をするのはまだ早い」と強調。冬場のインフルエンザ流行期も見据え、来春までのマスク生活の継続を求めている。

 「福井モデル」に注目

 マスクの感染防止効果をめぐって、着用の徹底を柱とした独自の対策「福井モデル」が注目されている。5月に厚生労働省の専門家組織の会合でも紹介され、「マスクをしていた方が感染リスクを避けられる」(脇田隆字=たかじ=座長)との評価が示された。ただ、脇田氏は「マスクをしていれば大丈夫というメッセージにならないようにすることも重要」と、ほかの感染対策の必要性も指摘している。

 福井モデルの発端は、4月に福井県で確認された感染者286人のうち、85%がマスクを着けずに会話をしていたことが県の調査で判明したことだった。「マスクなし感染」の68%が飲食をしており、41%が家庭や共同生活の場で感染していたことも分かった。

 県はマスクを外しがちな食事の場面が感染対策の急所になっていると判断。「おはなしはマスク」のキャッチフレーズを掲げ、食べ物や飲み物を口に運ぶ瞬間以外はマスクを着けたまま食事をする「マスク会食」の定着を推進する。

 今月中旬には飲食店の認証制度を始める予定で、マスク会食の実施率が50%に達していることなどを条件に、認証店には1店舗当たり10万円を支給する。

 福井モデルを分析した国立感染症研究所は「適切なマスク着用の実施に向けた周知・啓発が徹底的に行われることが期待される」としている。

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