教育・子育て

通学路の見守り活動に黄信号 あの事件で「心が折れ」…コロナ禍で活動休止も

 大教大付属池田小(大阪府池田市)の児童殺傷事件の発生から8日で20年となった。事件直後、全国に急増した通学路の見守りなどを行う地域のボランティア団体は、メンバーの高齢化や後継者不足が重なり、減少傾向に。さらに新型コロナウイルスの感染リスクから活動を控える団体も増えるなど、子供の安全を地域で守る運動に黄信号がともっている。(木ノ下めぐみ)

 「学校に悪い人が入ってくるなんて考えられなかった。学校の安全神話が崩れたと鳥肌が立った」

 当時保育園に通う孫がいたこともあり、池田小事件の2日後にいち早く地域で子供を見守る活動を始めた平寿彦(たいらことひこ)さん(74)=金沢市=は、こう振り返る。取り組みは全国に広まり平成25年には「全国子ども見守りボランティア協議会」の設立につながった。活動以来、校区内で子供が被害にあう事件事故はゼロ。「何もないのが何よりの成果。見守りの効果は確かにある」と胸を張る。

 平成13年の池田小事件をはじめ、16年に奈良県で、17年には広島県と栃木県でいずれも当時小学1年生の女児が殺害されるなど子供が犠牲となる事件を契機に防犯ボランティア団体の設立が相次いだ。警察庁によると、15年に約3千だった団体数が18年には約3万2千団体でメンバーも計200万人近くとなった。その一方で、メンバーの平均年齢が60、70代という団体が全体の7割を占めるなどの高齢化や後継者不足が進み、28年の約4万8千団体をピークに減少が続いている。

 平さんは減少の理由に29年に千葉県松戸市で起きた小学3年生の女児の殺害事件もあったのではと考えている。殺人などの容疑で逮捕された男は被害女児が通っていた小学校の保護者会長で、見守り活動にも参加していた。この事件を機に「活動自体を不審な目で見られ、心が折れてしまった人も多かった」と振り返る。

 さらに減少傾向に追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスの感染拡大だ。

 大阪市立放出(はなてん)小(城東区)の区地域活動協議会のように、感染防止策を取りながらこれまで通りの活動を続ける団体もあるが、コロナ禍により、活動を取りやめる団体も出てきた。

 同市南部の市立小では、一斉休校が明けた昨年6月以降、ボランティアによる見守り活動は休止に。高齢のメンバーが新型コロナへの感染を心配したため中止を決定したからだ。教頭は「厚意でやってくださる任意の活動。学校は無理強いできない」と打ち明ける。一方で、校内の消毒作業など教職員の負担も増えており、「通学路まで見回る余裕はなく、校内での安全確保を優先するしかない」と不安を口にする。

 文部科学省安全教育推進室の担当者は「感染防止のため地域でのさまざまな活動ができなくなり、見守りについても緊縮ムードを感じる」と危機感を隠さない。「見守りは家庭や地域、関係機関が連携し子供の安全確保を図る重要な活動。コロナを理由に中止ではなく工夫して活動継続を」と求める。

 コロナ禍だからこそ活動を盛り上げる学校もある。東大阪市立英田南小では、今年2月から地域住民の見守り活動に学校独自のキャラクターや同市に拠点を置くラグビーチーム「近鉄ライナーズ」の選手らが加わった。

 児童にも好評で、寺尾健一委員長(53)は「感染防止策を取りながら、学校と地域がワンチームとなり活動を続けたい」と話した。

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