ヘルスケア

ワクチン接種の対象年齢引き下げ 各省の発言で苦悩する自治体

 新型コロナウイルスワクチンについて、接種対象が若年層へも広がりつつある。中高生を対象に積極的に接種する自治体がある一方で、現行の16歳以上から12歳以上に広げた厚生労働省と「高齢者や基礎疾患のある人が優先だ」とする萩生田光一文部科学相の発言の間で苦悩する自治体もあるなど対応が揺れている。

 「国は姿勢示せ」

 「検討はしばらくストップしたい。国はアクセルを踏んでいるのか、ブレーキを踏んでいるのか分からない」。神戸市の久元喜造市長は10日の記者会見でこう苦言を呈した。

 5月31日に厚労省の専門分科会が、米ファイザー製の接種対象年齢を12歳以上に引き下げたことを受け、神戸市は市立中学と高校の生徒を対象とした集団接種の検討を開始。「迅速に幅広い世代にワクチン接種を進めるための選択肢の一つ」(担当者)としていたが、検討そのものを見合わせることにした。

 背景には萩生田文科相の発言がある。「まずは高齢者、次に基礎疾患のある人の接種を優先していることに留意してほしい」。6月8日の閣議後記者会見で、萩生田氏はこう言及した。さらに「発達段階の子供たちが、体の大きさに関係なく大人と同じワクチン量でいいのか」とも述べ、影響の有無を専門家と検証しているとも明かした。

 前進か慎重か。割れる見解に神戸市の久元市長は「国の方針が極めて混乱し困惑している。国がはっきり方針を示さないと、私たちは仕事ができない」と厳しい表情を浮かべた。

 若年層優先も

 若年層へのワクチン接種を優先する自治体も出ている。

 7月以降に本格化する65歳未満の接種に関し、中高生を優先する方針を打ち出した愛知県小牧市の担当者は「年齢順のやり方では10代が後回しになる。秋以降の教育活動の本格再開を見越した対応」と説明する。

 市には「安全性が担保されていない」「不安を感じている」とのメールや電話が殺到したが、大半は匿名で、東京など県外からの意見が目立つといい、科学的根拠に基づかない抗議も多数あったという。小牧市は引き続き、中高生優先で接種を進める方針だ。

 一方、小中学生への集団接種に向け準備を進めていた岡山県総社市は多数の意見が寄せられたことなどを受け、7日に予定していた12~15歳への接種券の配布を見送った。今後、国の対応も注視しながら検討を進めていくという。

 東京都新宿区のように、他の世代より先に20~30代への接種を始める自治体も。行動範囲の広い若年層に重点的に接種を行うことで、重症化リスクの高い高齢者への感染拡大を防ぐ狙いがあり、医療機関の負担軽減を目指すとしている。

 副反応見守る必要

 専門家はどう見るのか。「12~15歳への治験で大きな影響は報告されていない。積極的にワクチンは打つべきだ」とするのは、りんくう総合医療センターの倭(やまと)正也感染症センター長。「子供は重症化するリスクこそ低いが、家庭内感染の懸念は十分にある。予防策にはワクチンが最も効果的だ」とした。また小中学生への接種は保護者の同意が前提となることから、倭氏は「保護者は疑問点などをかかりつけ医に相談し、説明を受けた上で判断してほしい」とも話した。

 小児科医で大阪市立大の瀬戸俊之准教授(臨床遺伝学)は「ワクチンは幅広い年代で接種することが望ましいが、成人と小児では免疫反応に差がある。副反応について十分に見守る必要がある」と指摘。その上で「国は保護者の簡単な疑問に答えるサイトを作るなどし、小児へのワクチン接種に対する姿勢を明確に示すべきではないか」と述べた。

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