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クリームソーダ 甘く冷たいレトロな魅力

 細かな気泡が、シュワシュワと立ち上る。夏の日差しに映える色鮮やかなソーダ水。その中にぽっかりと浮かぶアイスクリームはどこか懐かしさのある趣だ。日ごとに暑さが増すこれからの時期、甘く冷たいクリームソーダでリフレッシュしたい。(小林佳恵)

 東京・銀座の一角に立つレンガ色の「東京銀座資生堂ビル」。その3階にある「資生堂パーラー銀座本店サロン・ド・カフェ」を訪ねた。

 同店で提供するアイスクリームソーダのフレーバーはレモンとオレンジ、季節のフルーツの3種類。飲料長の橋本和久さんによると、レモンの皮をごく薄く削り、時間をかけて煮出すなど、味の要となるシロップづくりには手間を惜しまない、という。

 こだわりはアイスクリームにも。その製法は門外不出で、橋本さんら一部の従業員しか入ることができない「アイスクリーム部屋」で手作りしているという。

 いずれも大正時代のレシピ帳に基づき、「時代に合わせて調合などを変えながらも、昔からの味わいを受け継いでいます」と橋本さんは話す。

 ■銀座の名物

 その昔ながらの味わいの起源は、およそ120年前までさかのぼる。資生堂の創業者、福原有信氏が明治33(1900)年、パリ万博を見学し、米国経由で帰国。そこで見聞したアイスクリームやソーダ水を製造・販売する「ソーダファウンテン」コーナーを同35(1902)年、資生堂薬局内に設けた。これが資生堂パーラーの始まりだ。

 後にソーダ水1杯につき化粧水1本を景品として付けると、当時、ファッションリーダーのような存在だった新橋の芸者の間で評判となり、銀座の名物となった。

 いつクリームソーダが誕生したかは定かではない。しかし、現存する最古の大正11(1922)年のメニューにはすでに、「アイスクリームソーダ水」の記載があるという。

 およそ100年、その甘く爽やかな味わいで、訪れた人をほっとさせたり、渇きを癒やしたりしてきた資生堂パーラーのクリームソーダ。メニューには大正からの表記を継いで、今も「アイスクリームソーダ」と記されている。

 資生堂パーラー銀座本店の支配人、井脇一禎(かずよし)さんは「いろいろな記憶が、店やアイスクリームソーダには刻まれている。そうした歴史や思い出を感じながら、くつろぎのひと時を過ごしていただけたら」とほほ笑む。

 ■昭和に興味

 カラフルなソーダ水にアイスクリームが浮かぶクリームソーダの写真は、最近、若者に人気の写真共有アプリの投稿でもよく見かけるようになった。

 そんな若者人気の背景を、昨年11月下旬~12月上旬、文教大学の清水麻帆准教授(文化経済学)が調査した。15~29歳の若者78人に聞いたところ、クリームソーダを飲んだことのある人は91・9%に上り、「10回以上飲んだ」というリピーターも42・3%いた。

 飲むきっかけ(複数回答)を聞くと「レトロな雰囲気を味わいたい」が32・4%、好きな理由(複数回答)については「おいしいから」が78・9%となり、それぞれ最多となった。

 「若者といえばSNSへの投稿目的とのイメージがあるかもしれないが、むしろ昭和という時代に興味があったり、純粋においしいから飲んだりしている人が多いようだ」と清水准教授は分析する。

 世代を継ぎ、愛されてきたクリームソーダ。この夏もまた、人々に涼や笑顔をもたらすだろう。

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