教育・子育て

「セーラー服に絶望」する子を救う学校の変化 進む性的少数者の生徒への配慮 (1/2ページ)

 学校現場でLGBT(性的少数者)の生徒への配慮が進みつつある。奈良県香芝市の中学校では性別関係なくスカートかスラックスか制服を自由に選べるようにしたほか、男女別トイレとは別に、性別にかかわらずに使える独立した個室のトイレを設置した。思春期は体に性の特徴が顕著に表れることから、性別に違和感を持ち、自傷行為や不登校に追い込まれる子供もいる。専門家は「学校側の配慮で、悩む子供を一人でも救い、安心して学校生活を送ることにつながれば」と取り組みの広がりを期待する。

 安心してトイレ使って

 奈良県香芝市の市立香芝東中学校ではこれまで男子生徒は詰め襟とスラックス、女子生徒はセーラー服とスカートだったが、昨年4月から、スカートかスラックスかを選べるようにし、上着は男女どちらも使えるデザインのブレザーとした。スラックスをはいている女子生徒は数人いるという。

 新しい制服の導入を計画した前校長の上嶋健氏(たけし)さん(60)は、「中学生は多感な時期で、自分の性別について悩む子もいる。こうした時期に男女をはっきりと区別する制服について、違和感を持っていた」と話す。保護者からは「よい取り組みだ」と好反応だったといい、「学校側がこうした配慮を進めることで、生徒の多様性への理解が進めば」と期待する。

 制服のほか、昨年10月には校舎の2階と3階に性別を問わずに使える独立した個室のトイレを計4室設置。多くの生徒らが行き交う廊下からはこのトイレに入るところが見えない設計にする配慮もした。

 性別に関係なく使えるトイレは近年、性的少数者への配慮として商業施設などに設置されるケースがある。一部には「混乱が生じるのでは」「逆に使いづらい」との声も聞かれるが、学校現場の場合、男女別の既存の共用トイレに加えて、独立した個室トイレを設置する取り組みが主流だ。文部科学省も配慮の例として「多目的トイレの利用」を挙げる。

 自分の性別に違和感を持つ子供以外に、共用トイレが苦手な子供も利用できるメリットもあるといい、上嶋さんは「安心してトイレを使ってもらうことで、少しでも学校生活が送りやすくなればと思った」と話す。

 抱え込む当事者

 「中学校に入学するとき、セーラー服を着ないといけないのかと思うと絶望感でいっぱいだった」

 戸籍上は女性だが、自分を男性と認識しているトランスジェンダーの中学教諭(27)=大阪市=はこう振り返る。

 当時通っていた中学校には、自身のような生徒への配慮は一切なかった。特に嫌だったのが体育の着替えや水泳の授業。「水着は自分の体型がはっきりと分かり、とても苦痛だった」

 しかし、当時はこうした悩みを誰かに打ち明けることはなかった。生理中だと知られるのが嫌で、トイレに行く際に他の人から見られないように苦心した記憶がある。「学生時代は知識がなく、嫌だと思うことがあってもどうしたらいいのかわからなかった」

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