大変革期のモビリティ業界を読む

革新する「大阪メトロ」 万博と都市型MaaSが大阪の未来を切り拓く (2/2ページ)

楠田悦子
楠田悦子

 次世代交通システムの構築

 中期経営計画の最終年度に当たる2025年には大阪・関西万博が開催予定で、会場は臨海部に位置する人工島の夢洲だ。

 アクセスは一般の自家用車での直接的な乗り入れができない。会場から約15キロ圏内に設けられる会場外駐車場からバスに乗り換えるパークアンドライド式が採用される。また大阪メトロ中央線のコスモスクエア駅から会場となる夢洲に鉄道(北港テクノポート線)が延伸され、新駅がつくられる計画だ。想定来場者数は約2,820万人にのぼり、ここでも大阪メトロの活躍が期待される。

 大阪・関西万博の基本計画によると、会場を未来社会のショーケースと見立てて、再生可能エネルギーの活用、5Gネットワーク、空飛ぶクルマ、MaaS、人と共存するロボットなどによるSociety5.0実現型会場を目指そうとしている。すると万博の会場内では、東京五輪・パラリンピックを超える、かなりの数の自動運転車両やロボットが活用されるのではないかと想定される。

 大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)交通事業本部MaaS戦略推進部の豆谷美津二氏は、「まだ大阪万博の詳細な計画は公開されていないが、大阪・関西万博に関して大阪メトロとして、積極的に関わっていきたいと考えている。万博の会場を想定して複数の企業と連携しながら、複数台の自動運転車両を走らせることにより群管理の実証実験を行う予定であり、将来的には未来社会における自動運転車両やエネルギーマネジメントなどを組み込んだ次世代の交通管制システムの構築を目指していく」と語る。

 自動運転とまちづくりの関係に詳しいAMANE社によれば、エネルギーや多様な自動運転車の群管理は、将来的に都市OSやスマートシティ・スーパーシティにつながる考え方で、挑戦的な実証なのだという。

 大阪メトロの革新により、大阪や関西がどのように変わっていくのか。東京周辺とは異なる斬新でユニークな取り組みが出てくるのではないかと、今後の展開が非常に楽しみだ。

心豊かな暮らしと社会のための移動手段・サービスの高度化・多様化と環境を考える活動に取り組む。自動車新聞社のモビリティビジネス専門誌「LIGARE」創刊編集長を経て、2013年に独立。国土交通省のMaaS関連データ検討会、自転車の活用推進に向けた有識者会議、SIP第2期自動運転ピアレビュー委員会などの委員を歴任。編著に「移動貧困社会からの脱却:免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット」。

【大変革期のモビリティ業界を読む】はモビリティジャーナリストの楠田悦子さんがグローバルな視点で取材し、心豊かな暮らしと社会の実現を軸に価値観の変遷や生活者の潜在ニーズを発掘するコラムです。ビジネス戦略やサービス・技術、制度・政策などに役立つ情報を発信します。更新は原則第4月曜日。アーカイブはこちら

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