電動の時代にも走る喜びを
ただし、希望の光も射す。これまで治外法権のように電動化から逃れてきた軽カーも、よりストロングな電動化に進まざるを得ない風潮にある。日本の道路を走る約半分は軽自動車である。単体で見れば軽量コンパクトであり可動距離も少ない。環境への影響度はそれほど高くはない。とはいえ、進化著しいハイブリッドに比較して、燃費や二酸化炭素排出量で見劣る。官民あげてのカーボンニュートラルには、道路の半分を占める軽カーも電動化せねばならないのである─という風潮が、S660の後継モデル計画に結びつかないものかと期待するのだ。
操縦フィールは爽快である。アップテンポな気持ちでコーナリングに挑むのは快感である。パワーは64psなので、アクセルペダルを床まで踏み込んでも力強く加速するわけではない。だが、限られたパワーを精一杯叩きつけて走らせる喜びは格別なのである。
カーボンニュートラルに突き進む中で、失われそうなのはドライビングする喜びである。そして走りが楽しいモデルの絶滅が危惧されている。電動化を叫んだホンダだからこそ、新世代のS660を開発してほしいと願う。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。