ヘルスケア

英で行動規制撤廃「危険な実験」 市民に戸惑いも

 英政府は19日、ロンドンを含む南部イングランドで新型コロナウイルス対策の行動規制をほぼ撤廃した。ただ感染者が急増中の撤廃には「危険な実験」と懸念も上がっている。一部ではマスク着用義務を継続する動きがあり、市民には「自由」を歓迎する一方、当惑する姿もみられる。(ロンドン支局 板東和正)

 英メディアは19日を「フリーダムデー(自由の日)」と報じた。約1年半ぶりに営業が再開したロンドン中心部のナイトクラブでは、マスクを着用していない数百人の若者らが押し寄せ、「19日午前0時」の解除の瞬間をダンスフロアで迎えた。ナイトクラブに訪れた会社員男性(26)は「新型コロナに奪われた自由をようやく取り戻せる日が来た」と産経新聞の電話取材に喜びを語った。

 イングランドでは19日、公共交通機関・店舗でのマスク着用義務や他人との距離を確保するルールが撤廃され、バーやレストランでの人数制限なども解除された。営業を禁止されていたナイトクラブが再開し、在宅勤務の奨励も終了する。

 感染者と濃厚接触した人に対する自主隔離の義務は残る。ジョンソン首相は18日、「慎重に行動してほしい」と国民に呼びかけた。

 英政府は全成人が19日までにワクチンを1回以上接種し、重症者数や死者数を抑えられているとの判断から、規制撤廃に踏み切った。「ウイルスと共生する社会」を目指し、感染対策の義務化から個人が自己責任で感染防止に努める方針に転換させたい考えだ。

 だが、英国では感染力が強いインド型変異株(デルタ株)が猛威を振い、1日の新規感染者は16日以降、2日連続で5万人を超えた。特に若年層のデルタ株感染が目立つ中、未成年のワクチン接種は進んでおらず、撤廃は「極めてリスクの高い実験」(感染症の英専門家)とみられている。

 市民も警戒を解いていない。英調査会社イプソス・モリが14日に発表した世論調査では、7割以上が規制撤廃後も公共交通機関や店舗内ではマスク着用を続けると回答した。

 ロンドンのカーン市長は14日、「市民を危険にさらせない」と訴え、19日以降も市内の公共交通機関でのマスク着用義務を継続すると表明した。マスクを着用しない乗客は利用を拒否される可能性があるため、市交通局が運営する地下鉄やバスでは19日朝からマスク姿の人が目立った。

 英大手スーパーのセインズベリーやテスコも店内でマスク着用を続けるよう客に要請した。ロンドン在住の自営業、ジョン・ラガードさん(31)は電話取材に「公共交通機関や一部の店舗が政府と異なる方針をとっており、正直戸惑っている」と打ち明けた。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus