まさかの法的トラブル処方箋

相続紛争を減らすために…“副作用”と対策を知って、躊躇せず遺言書の作成を (2/2ページ)

上野晃
上野晃

 家族の理解、納得を得る

 このように、遺言書は法に従えばむしろ、当事者にとって望ましくない結果となる場合に、それを修正する役割を果たします。けれどもその副作用もあるのは事実です。遺言書に納得のいかない相続人が遺留分請求などで裁判手続きをしてくるなどがあるのです。考えてみれば、当然、そういう紛争は起こり得ますよね。だって、本来法律では均等に分けた財産がもらえたはずなのに、親が勝手にお兄さんにばかり多くの財産を残していたら、そりゃ弟妹は不満でしょう。

 こうした紛争を防ぐには、遺言書を作成する段階からきちんと被相続人になるお子さんたちを集めてどんな遺言書を作成しようとしているのか、なぜそのような遺言書を作成してようと思っているのか、十分に説明しておく必要があります。そして、家族みんなでその遺言書の意味を理解し、できればみんなに納得してもらっておくと良いと思います。

 仮に納得できないという方がいたとしても、生前にそうした意見を聞くことで、それを遺言書に反映もさせられるでしょう。このようにすることで、ご本人の死後の相続紛争は格段に減らせるだろうと思います。

 「信じること」と「コンプライアンス」の両立

 ドラマなんかで、よく「信じ合う」ことの大切さを説くシーンがあります。確かに信じ合うことは重要です。しかし一方で、世の中はコンプライアンスが強く叫ばれています。すべてをルール化することの必要性です。

 これって、つまり他人を信じることの危険性を前提にしていると思います。要は、今の世の中って、「他人を信じる」という理想と「他人なんて信じられない」という現実の狭間でみんながオロオロしながら彷徨っている状態なんじゃないでしょうか。私はこの2つは両立できるし両立しなければならないと思っています。なぜなら、他人を信じることは重要だけれども、信じすぎることは危険だからです。理想を抱くことは大切だけれども、現実を知ることもまた大切だからです。

 私たちは、この両者のバランスをいかに取っていくかという課題を、時代を超えて突き付けられ続けています。

 私はよく、「弁護士のいらない世の中が一番良い世の中だ」なんて言っています。他人を信じられる世界こそが理想で、そこに近づいていかなければなりません。そのためには、われわれ一人一人が、人間的に成長していくことが求められているのではないでしょうか。

 遺言書を作成することはコンプライアンス上、重要です。同時に遺言書を作成するのを機に、家族みんなで話し合いをして、家族の信頼を築き上げる良い機会にしてみてはいかがでしょうか。

神奈川県出身。早稲田大学卒。2007年に弁護士登録。弁護士法人日本橋さくら法律事務所代表弁護士。夫婦の別れを親子の別れとさせてはならないとの思いから離別親子の交流促進に取り組む。賃貸不動産オーナー対象のセミナー講師を務めるほか、共著に「離婚と面会交流」(金剛出版)、「弁護士からの提言債権法改正を考える」(第一法規)、監修として「いちばんわかりやすい相続・贈与の本」(成美堂出版)。那須塩原市子どもの権利委員会委員。

【まさかの法的トラブル処方箋】は急な遺産相続や不動産トラブル、片方の親がもう片方の親から子を引き離す子供の「連れ去り別居」など、誰の身にも起こり得る身近な問題を解決するにはどうしたらよいのか。法律のプロである弁護士が分かりやすく解説するコラムです。アーカイブはこちら

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