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「2時間5500円の焚火が大人気」都会暮らしの人たちが“火起こし”に集まるワケ (1/2ページ)

 アウトドア用品のスノーピークが、東京都昭島市の店舗に開いた「焚火ラウンジ」が人気を集めている。料金は2時間5500円で、週末の予約はお盆期間までほぼ埋まっている。なぜいま焚火なのか。経済ジャーナリストの高井尚之さんが取材した--。

 ■焚火の奥深さにハマる人が続出

 7月1日、東京都昭島市にある「スノーピーク 昭島アウトドアヴィレッジ」(直営店舗)の屋外スペースに、ひとつの施設がオープンした。

 「スノーピーク焚火ラウンジ」(Snow Peak TAKIBI LOUNGE)は、2時間5500円(1組4人まで)で、気軽に焚火が楽しめるものだ。アウトドア総合メーカーの株式会社スノーピーク(本社・新潟県三条市)が運営する。

 小学校や中学校の野外活動で「キャンプファイヤー」を経験した人は多いだろう。しかし、最近、アウトドア派の間で人気が高まっている「焚火」は、それとはちょっと違うようだ。

 ■キャンプをしない人たちこそ体験してほしい

 「もともと焚火は、スノーピークにとって大切な存在です。自社で開発した焚火台や耐熱性に優れたアパレルなどのアウトドア商品もご好評いただいており、全国各地で開催するキャンプイベントでは『焚火トーク』を必ず行います。先日も東北地方で実施しましたが、180組・300人の方にご参加いただきました」

 スノーピークの永松悠佑氏(営業本部 新業態開発課 マネージャー)はこう説明する。2015年3月に開業した同店の初代店長も務めた永松氏は生まれも育ちも東京都下で、子どもの頃は学校の授業で田植えを行うような環境で育ったという。

 なぜ今回、スノーピークは焚火ラウンジをつくったのか。

 「アウトドアに興味がある人に、まずは体験してほしいと思ったのです。そこで都心から1時間で来られる直営店に併設しました。当社の事業活動とキャンプは切り離せないものですが、キャンプ人口は人口全体の約7%。それ以外の93%に訴求したいのです」

 今回の「焚火ラウンジ」の場所は思ったよりも近い。JR新宿駅からJR昭島駅までは電車で約40~45分。昭島駅から昭島アウトドアヴィレッジは徒歩5分程度で行ける。クルマで移動する場合も混んでなければ早い。必要な用具はすべて揃っているので、手ぶらで来られるのも特徴の一つだ。オープンから人気を博し、現在週末の予約はお盆期間までほぼ埋まっている。

 ■「暗闇で炎を眺めていると癒される」

 永松氏は、さらにこう続ける。

 「焚火を囲んで話すと心理的な距離も縮まります。当社が行うイベント参加者も、見知らぬ同士でもやがて親しくなり、SNSの連絡先を交換したりしています。『暗闇で燃える炎を眺めていると癒される』という声も聞き、燃える火には揺らぎ効果もあります」(同)

 焚火ラウンジの横にある直営店には「薪(まき)」も積まれており、足りなくなれば追加の薪(1束880円)も購入できる。ひとくちに薪というが種類もさまざまだ。

 「薪となる木材には、大きく分けて針葉樹と広葉樹があり、着火性が良いのは針葉樹のスギやマツです。広葉樹は火が付きにくいものの、火持ちします。広葉樹の中では白樺は燃えやすく焚き付けの薪に向いています。火の勢いを調整する薪の組み方もさまざまです」(同)

 熟練者は多彩なやり方を行う。あえて燃えにくい薪で苦労を楽しむ人もいれば、気温や天候で薪を細かく変える人もいる。芸能人や業界の有名人が「鍋奉行」ならぬ「薪奉行」として独自のやり方を動画で発信するケースも話題を呼び、夏でも焚火を楽しむ愛好家は増えてきた。逆に、寒い冬は暖を取るのに最適で、虫に悩まされないので人気だという。

 「薪が燃え尽きてきました。この段階を『置火』といい、チカチカと光り幻想的です」

 こうした話も焚火を囲みながら聞いた。パチパチと燃える炎を見ながらの会話は通常の取材よりも風情があり、置火は味わい深い。薪の燃えるニオイも久しぶりに嗅いだ。

 ■「障壁」を取り除くための“手ぶら”プラン

 今回、焚火ラウンジでは焚火以外も楽しめるプランを用意した。例えば「手ぶらBBQプラン」(価格1万1000円=1組4人まで。追加大人1人1650円、高校生以下同880円、小学生以下無料)は、焚火とバーベキューがセットになったプランで、食材を持ち込めば、さまざまな料理を楽しむことができる。軽食メニューやドリンク(別料金)は店頭で注文可能。参加人数で割れば、手頃な価格で楽しめそうだ。

 マーケティングや商品開発の現場では、「消費者の障壁を取り除く」という共通認識がある。この場合の「障壁」は物理的や心理的な抵抗感をさす。

 例えば最近よく聞くのが、ペットボトル飲料の空きボトルを捨てる際、「ラベルを剥がすのが意外にストレス」という声だ。

 コロナ以前、通勤をしている時代は気にならなかったが、リモートワークが中心となりペットボトル飲料の自宅消費も増えた。容器によって剥がし方が違い、うまく剥がれない時もある。これに目をつけたメーカーはラベルレスの容器を発売して消費者に支持された。

 今回の事例もそれに当たる。焚火に何となく興味がある人に、手ぶらで楽しんでもらうという訴求は珍しい。現代の消費者は総じて手間のかかる行為を好まない。何に凝って何に凝らないかは人によるが、多くの人にはなじみの薄い「焚火への障壁」を取り除いた。

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