教育・子育て

共通テスト「記述式」正式断念 今後は個別試験の充実課題

 記述式問題と英語民間検定試験の大学入学共通テストへの導入断念が正式に決まり、今後は各大学が行う個別試験の充実が求められる。だが即応が困難な大学も出てくる可能性もあり、個別試験充実に向け文部科学省の関与が不可欠となりそうだ。当面は現在の方式が維持される共通テストの「質」向上も課題として残る。

 個別試験の充実は、共通試験での導入断念を提言した大学入試の在り方を議論する同省の有識者会議で指摘されたほか、萩生田光一文部科学相も強調している。

 同省の調査によると、令和2年春の入試で記述式を出題したのは、国立大の99・4%に対して、私立大は54・1%。「読む・聞く・書く・話す」の英語4技能のうちリーディング(読む)を課していたのは大学全体で92・6%だったが、スピーキング(話す)は0・2%にとどまる。いずれも大学によって取り組みに偏りがあるのが現状で、ノウハウの蓄積や受験規模によっては、個別試験充実の要請に応えることが難しい大学が出てくることも想定される。

 このため、有識者会議は今月示した提言で、各大学での記述式導入を促進するための同省などの取り組み例を示した。提言では、(1)記述式の良問例を公表(2)問題作成や採点効率化の工夫事例を提供(3)大学の枠を超えた過去問の相互利用-などを例示。良問作成のノウハウを同省や大学などが共有する仕組みが必要になりそうだ。

 また、英語4技能の評価方法として優れた民間試験を個別試験で活用することが考えられるが、居住地域や経済状況により受験機会に格差が生じるといった共通テストでの導入断念に直結した課題は残る。このため、検定料減免やアクセスしやすい会場設定などに関して、同省が試験を実施する団体などと調整することが想定される。

 当面は現行の方法が維持される共通テストの水準を保つことも求められる。初回となった今年1月の共通テストに対する外部評価結果では、ほとんどの科目で肯定的な指摘がなされた一方、一部で「思考力を必要としない」などと批判的な意見が付いた。また、同省の有識者会議でも「質の高い問題作成を続けていくことの難しさを感じる」といった意見があった。一部科目の改善と全体の質の維持が求められている。

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