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職域接種は8月下旬から本格化 迫られる仕切り直し

 新型コロナウイルスの感染が全国で拡大する中、6月に新規の受け付けが休止されたワクチンの職域接種は、今もなお足踏み状態が続いている。国は供給のめどが立つ8月23日の週から本格化させる見通しを示しているが、申請済みの多くの企業や団体、大学では、医師や会場の確保、接種人数の把握など計画の仕切り直しを迫られている。夏休み中の接種完了を目指していた大学では、秋以降の授業への影響を心配する声も上がり始めた。

 予定遅れで再調整の必要

 当初7月17日から職域接種を始める予定だったという名古屋港管理組合(名古屋市)は、ワクチン不足のため一度も接種を実施できないままだ。

 国からは7月に入ってすぐ、「接種は8月9日以降になる」と連絡があったが、その後、「8月30日の週までになる」と変更が伝えられた。

 産業医に依頼し、医師や看護師ら約10人を確保していたが、大幅にスケジュールを組み直す必要があり、担当者は「予定がだいぶ変わった。接種の日程を再調整しないといけない」と焦りを口にする。

 当初は組合での接種を希望していたものの、すでに自治体が設けた会場で接種を済ませた人もおり、「1会場1千人以上」とする職域接種の実施要件に該当しなくなる可能性もある。担当者は「正確な接種希望人数を調べたい」と話す。

 大学は一日千秋「ワクチン早く」

 学生らの接種を夏休み中に終えようと計画していた大学では明暗が分かれた。

 いち早く接種体制を整えた近畿大学(大阪府)は、職域接種の受け付け初日に申請。職域接種が開始された6月21日から1日2千人ペースで続け、8月6日には学生や教職員ら約2万3千人の2回目の接種を完了した。担当者は「医学部や薬学部、大学病院の協力で迅速な体制を組めた」と胸をなで下ろす。

 一方、新規の受け付けが休止される直前に滑り込みで申請したが、接種開始日がいまだ見通せない大学もある。

 独協大学(埼玉県)では当初、学生や教職員ら約1万人を対象に7月末から1回目の接種を行う計画だったが、ワクチン不足でストップ。8月に入り文部科学省から「8月30日の週以降の開始を見込む」と連絡がきたが、担当者は「まだ確定ではなく、予約の受け付けもできない」と気をもむ。

 秋から対面授業を本格化させる予定だったが、接種開始がずれ込めば影響は必至だ。「副反応で授業を休む学生も出てくるだろう。その場合の対応策も考えないといけない。ワクチンが早く届いてほしい。一日千秋の思いだ」

 計画遅れでキャンセル料

 計画の遅れによりキャンセル料が発生したケースもある。

 健康保険組合連合会(健保連)が全国の組合に実施状況を調査したところ、6組合で、確保していた医療従事者や会場のキャンセル料が発生。その額は計約4千万円に上ったといい、政府にキャンセル料についての財政支援を求めている。担当者は「キャンセル料が発生している事例は他にもあるだろう」と推測している。

 人件費高騰、コスト面で断念も

 厚生労働省によると、職域接種にはこれまで約5千会場から申請があったが、接種が行われたのは約2300会場(1日時点)にとどまる。

 申請済みの企業や大学では8月下旬から接種が本格化するが、新規受け付けの再開時期は不透明だ。自治体による接種も進んでいるため当初に比べて需要が減っている上、医療従事者の確保にかかるコストが高騰しており、断念したケースもある。

 富山県の宿泊事業者が加盟する同県ホテル・旅館生活衛生同業組合は、組合員ら計約2千人の職域接種を想定し、医療従事者専門の人材派遣会社に見積もりを依頼。1日あたり医師3人と複数の看護師を8日間派遣するプランで約2700万円を提示された。

 会場費なども含めての金額だったが、担当者は「とても支払える金額ではなかった。観光に携わる組合員に早く接種できればという思いだったが…」と残念がる。地元医師会にも相談したが、自治体の集団接種などで人材に余裕がないといわれたという。

 「医師は時給約2万円が多いが、中には高額な場合もある」。九州地方の医療従事者専門の派遣会社は明かす。

 約1500人分の職域接種を8月13日までに完了予定の奈良県中央卸売市場協会によると、6月中旬に時給2500円で10人程度の看護師を募集したところ、20人近い応募があったという。担当者は「今では一部で時給の相場が上がっていると聞く。すぐに確保に動いたので、滞りなく接種を実施できた」と話していた。(桑島浩任、田中一毅)(【関連】米、中国・武漢ウイルス研究所の膨大データ入手か

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