まさかの法的トラブル処方箋

「相続争い」…それは単にお金のもめ事に非ず 紛争の火種を残さないために (1/2ページ)

上野晃
上野晃

 誰の身にも降りかかる「相続争い」

 相続争い-。多くの人は、「自分には関係ない」と思っているのではないでしょうか。自分の家族は仲良しだからそんなこと起きっこない、と。しかし、厳しい言い方ですが、それはまあ幻想と言ってしまって良いでしょう。相続争いに巻き込まれた人の大半が、「自分がこんな相続争いの渦中にいるなんて」と、ある日言葉を失いながら立ち尽くすのです。そう、相続争いは誰の身にも降りかかるものなんです。

 「相続争い」と聞いて抱くイメージはどんなものでしょう。親の他界後、親が残したお金を取り合うという醜い争いといったイメージを持ったりしていませんか? 私は、そのイメージは必ずしも当たっているとは思いません。というか、かなりの件数の相続争いで、その本質が実はお金のもめ事ではないと明らかになるケースが多々あります。

 ある姉妹がいました。親が他界して、ふたりが相続することになりました。二人とも互いに「半々でいい」と言っています。ならば争いなど起きようがないと思いませんか? しかしです。この姉妹、その後大変な相続争いになるんです。

 争いの始まりは、ちょっとした意見の相違でした。相続財産に預貯金以外、2つの不動産建物があったのです。そしてそのうちの1つに姉が住み、残りの1つは賃貸をしていました。賃貸物件については売却してしまおうということになり、これについては二人とも異議なしだったのですが、残りの不動産について意見が割れたのです。姉は「自分が住む」と言いましたが、妹は売ることを希望しました。

 姉がそれを拒否すると、妹は「ならば代償金を払ってほしい」と言い、通常よりもはるかに高額の代償金を求めてきたのです。

 姉は怒りました。

 「母にとって思い出の家なのに、売れなんて。私が売らないことを知りながらこんな高額なお金をふっかけてきたんだわ」

 その後、調停になり、いろいろな書面の応酬があり、妹の気持ちが徐々に見えてきました。どうやら妹は、母と姉の関係にずっと長い間嫉妬していたのです。母が姉をえこひいきし続けてきたと思い、そのことに対して最後の抵抗を試みていたのです。

 “長男優先”的な価値観に対する反発

 会社を経営していた方がお亡くなりになった場合、会社事業の承継問題というテーマも起きます。その際、長男に継がせたいと考える経営者もまだまだ多いです。そして、そういった考えの方は、財産の散逸を防ぐためにも、長男に多くの財産を残そうとするのです。それによって、紛争が起きるということも多々あります。

 ここでの対立は、新旧の価値観の対立と言っていいと思いますが、「新」=正義で、「旧」=悪という単純な考えでは、このもつれた糸を解きほぐすことは難しいのではないでしょうか。確かに、長男優先という価値観は古いと言えるでしょう。それが正しいとも思いません。

 しかし、経営者として自身が他界した時に最も懸念されるのが、会社の財産が散逸し、結局会社が維持できなくなってしまうことです。この悩みは切実です。現代の民法は徹底して平等主義を採用しています。それは憲法14条の法の下の平等に則ったものです。

 現代日本において、平等は間違いなく正義なのです。次男や次女たちは、「平等であれ!」と声を上げます。彼らの声は切実であり、そしておそらく正当なものでしょう。なのにその結果、会社が消失していってしまう。

 経営者の方々の多くは、こうした矛盾にぶつかり、最終的に憲法的正義よりも現実の要請を優先するのです。その結果、相続人間で激しい相続争いが起きてしまいます。

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