千葉県八街(やちまた)市で6月、トラックが下校中の小学生の列に突っ込み児童5人が死傷した事故を受け、警視庁は19日、夏休み明けの児童の安全確保に向け、可搬式オービスによる速度取り締まりなどの交通事故防止啓発活動を展開した。
可搬式オービスは簡単に設置でき、生活道路などで取り締まりを実施し、ドライバーへの注意を促す効果が期待されている。
この日、警視庁は東京都町田市内の通学路になっている道路に可搬式オービスを設置。速度違反の取り締まりを行ったほか、親子連れに声を掛け、交通事故から身を守るための安全行動などについて啓発した。
警察庁によると、平成28年から令和2年までの5年間で小学生の交通事故による死者・重傷者は4687人。このうち、徒歩で登下校の際の事故は908人。都内でも今年に入り、7月末までに中学生以下の死亡事故が2件発生。43件の重傷事故が起きている。
八街の事故ではトラックの運転手が、飲酒して運転していた疑いがあり、規範意識の欠如も指摘されている。警視庁の担当者は「生活道路でも取り締まりを受けるという認識を持ってもらい、安全意識の醸成につなげたい」と話した。
模索続く安全策
千葉県八街市での事故を受け、国は通学路の危険箇所などを抽出する再点検を進めるとともに、抜本的な安全対策を模索する。
現場の市道は道幅が約6・9メートルだった。抜け道として使われ、交通量は多かったが、歩道やガードレールはなかった。住民らは自治体に危険性を指摘。ただガードレールの設置は道路幅が足りないなどで実現していなかった。
平成24年の京都府亀岡市で登校中の児童が死傷した事故を受け、国が実施した一斉点検でも危険箇所には抽出されていなかった。
今回の八街での事故以降、国は通学路の再点検を実施。各学校が住民から改善要望が出ていた地点などをリストアップするなどし安全対策も並行して行う。
ただ、ガードレールといったハード面の整備は時間を要する上に、財政的負担も大きい。加えて道路の拡張も必要になるケースもあり、全ての危険箇所に設けることは事実上難しい。
そこで、期待されるのが可搬式オービスだ。車の速度をレーザーで測定し、速度超過の場合はナンバープレートなどを自動的に撮影するものだが、警察官2人で10分以内に設置作業ができる。道幅が狭い生活道路でも活用でき、ドライバーへの注意を促せる。
警察庁によると、今年2月の有用性調査で、茨城県で朝の通勤時間帯に、車の平均速度が実施前の時速41・3キロから33・9キロに低下した効果も確認された。
可搬式オービスは昨年度末時点で新潟を除く46都道府県に計99台配備されているが、最も多い東京でも7台だ。ただ、国も今回の事故対策の一つに掲げており、今後配備が進む可能性もある。(吉沢智美)