ヘルスケア

プレハブで病床 民間“野戦病院”「現場は命懸けの戦い」

 新型コロナウイルスの感染急拡大で、入院できずに自宅で亡くなるケースが相次いでいる。首都圏では入院率が1割を切るなど医療体制は逼迫(ひっぱく)。病床を増やすため、臨時医療施設(野戦病院)の設置を求める声が上がる。こうしたなか、プレハブや体育館を活用し、臨時医療施設を整備する民間病院や一部自治体もでている。

 19日午前10時ごろ、埼玉県三芳町の「ふじみの救急病院」では、病院裏のプレハブに設置された発熱外来の受付に長蛇の列ができていた。

 「濃厚接触者ですか? 喉が痛いなど、症状はありますか?」

 最高気温が33度にもなる炎天下で、防護服を着た看護師らが汗を流しながら、患者に聞き取りをしていた。「さばいてもさばいても列が途切れない…」。こんな声が漏れる。

終わり見えない

 鹿野(かの)晃院長(48)は「かつてないフェーズに突入している」と警戒する。PCR検査数は1日約800~1千件に上り、第3波のピークだった今年初めと比べても約3倍になった。

 重症病床10床は常に満床。前日に2床が空いたものの、当日のうちに新たな重症患者が運び込まれる“自転車操業”の状態だ。プレハブ病棟にも中等症以下の病床19床があるが、ほぼ満床の状態が続く。「厳しさは増している。終わりが見えない」(鹿野院長)

 ふじみの救急病院は、24時間365日対応の救急科を擁しながら、訪問診療なども行う地域の病院だ。かつては病床数19床以下の小さなクリニックだったが、昨年4月、コロナ患者用の病床を増やすため、駐車場にプレハブの臨時病床を建設した。

 隣接する約3千平方メートルの敷地を借り上げ、ドライブスルーにも対応するPCR検査センターと発熱外来もプレハブで整備した。

 鹿野院長は「ここは野戦病院のはしりだ」と話す。民間で独自に臨時医療施設を作り、コロナという未曽有の危機に直面した地域医療を支えている。

限界近い

 鹿野院長は「自宅療養者を減らすなど、限りある医療資源を一極集中させる野戦病院には意味がある」と語る。一方で、「ベッドをいくら増やしても、医療従事者の人数に限りがある」と指摘する。

 30代の看護師が陽性患者の対応でコロナに感染した。看護師はプレハブ病床で療養しているが、具合が良い時には、他の陽性患者へ食事提供や、酸素ボンベの交換などの業務を手伝っているという。板垣光純(みつよし)看護部長(44)は「現場は全員、命懸けの戦いをしている。もう限界が近い」とし、「これが現実」とつぶやいた。

 鹿野院長は「病床数を増やせばいいという段階ではない。そもそも感染者自体をこれ以上増やさない根本的なアプローチが必要」と強調する。「検査を拡充し、陽性者の早期発見、即隔離の体制を整える。水際対策を徹底するなど、まだやるべきことはある」

体育館を活用

 急増する感染者対策で臨時医療施設を整備する自治体もでてきた。福井県は体育館に最大100床のベッドを並べ、臨時医療施設とする態勢を整えた。

 対象は軽症者・無症状者。県地域医療課の担当者は「野戦病院は“最後のとりで”だ」と話す。福井県では、基本的に自宅療養をさせない方針だ。今後、県内の病床が満床になったとしても、保健所が1件ずつ電話したり、患者の住居に医師に巡回してもらったりすることは現実的ではないと判断。臨時医療施設を整えたという。

 担当者は「感染拡大を抑える努力を最大限続けていきたい」と強調。施設は整えたが「この病床を使う事態にはなりたくない」と話した。(浅上あゆみ)

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