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ライバルは「カンヌ」 広島で来夏開く国際フェスの中身 

 来年夏、広島に新たな音楽とメディアのフェスティバルが誕生する。8月の1カ月間にわたり行われる「ひろしま国際平和文化祭」。実行委員会は、世界へ羽ばたく人材を育成し、世界最高水準の音楽コンクールや国際映画祭などへの登竜門となるフェスティバルを作り上げたいという。目指すは世界と肩を並べる音楽とメディアのフェスティバル。このほど、実行委員会では1年前のPRイベントを実施し、その概要を明らかにした。

 隔年で開催

 今月1日、「ひろしま国際平和文化祭」の実行委員会が開催概要を発表した。

 関係者と報道陣向けだったが、広島ウインドオーケストラの生演奏に合わせ、漫画『この世界の片隅に』などで知られる漫画家、こうの史代さんの『夕凪の街 桜の国』の原画を複製した作品にプロジェクションマッピングを披露する力の入れようだった。

 芸術祭のコンセプトは「平和の種をまき、次世代を育てる」。2年に1度の開催とし、音楽とアニメーションなどのメディア芸術を柱に、国際的なコンクールの実施やアニメコンペティション、また、アーティストとの交流など市民参加型のイベントなども企画されている。

 音楽部門の企画の一つとしては、次世代の指揮者コンクールを開催。来年1~3月に国内外から参加者を15人程度募り、開催中に公開審査や受賞者による演奏会を実施する。

 メディア芸術部門ではアニメ作家や監督らを招(しょう)聘(へい)し、市民らと交流しながらアニメを制作して発表。アニメコンペでは、環太平洋・アジアコンペとワールドコンペを実施。環太平洋・アジアコンペでは、長編、短編、学生の3部門で公募を行う。また、アワードも実施。将来的には米国アカデミー賞などと同様に国際的な主要賞として注目されるようなものになることを目指す。

 ひろしま国際平和文化祭の総合プロデューサー、藤木清治氏(49)は「広島の魅力を国内外に発信できるような人材とコンテンツを作っていきたい」とし、「多くの方に来ていただくためにも、その『器』を用意しないといけない」と意気込む。

 目指すは世界

 藤木氏らが目指すのは「世界と肩を並べる音楽祭やメディア芸術祭」だ。

 音楽祭で参考の一つにするのは、64年前に始まったオーストリアのオペレッタ・フェスティバル「メルビッシュ湖上音楽祭」。オーストリアとハンガリーにまたがる世界文化遺産のノイジードル湖を舞台にした世界的な有名な音楽祭で、夏にオペレッタやミュージカルなどが上演されている。日本のファンも多い。

 日本ではこうした「外」での音楽祭が珍しいこともあるが、さらに「広島ではオペラも盛ん」であることが理由の一つだという。広島では「オペラのまち広島」を都市の顔として定着させようと、平成6年から「ひろしまオペラルネッサンス」(昨年、今年は新型コロナ禍のため中止)が行われており、オペラが親しまれてきた歴史がある。

 メディア芸術もしかり。広島では、原爆投下から40年となった昭和60年から「愛と平和」をテーマにした「ひろしま国際アニメーションフェスティバル」(広島市など主催)が隔年で開催されてきた。

 昨年1月に広島市が一新する方針を表明したことで従来のフェスの形としては昨年の第18回大会が最後となったが、広島は世界の4大アニメーション映画祭開催地の一つとしても知られるようになった。

 市としては、この一新が今回概要が発表された音楽とメディア芸術の総合型の芸術祭イベントとなるもよう。こうした下地があることは強みであり、藤木氏は「今回は取り入れていないが、ゲームコンテンツとしてゲームのキャラクターも世界に勝てるものと思っている」と期待は大きい。

 広島だからこそ

 広島で開催する意義として、平和国際都市としての継承もあるという。8月に開催するのもこのためだ。

 「例えば、国際映画祭としてはカンヌや後発の釜山などが世界的に注目を集めているが、広島だからこそできるものがある。普遍的な価値がある」と藤木氏。

 8月の広島では鎮魂をキーワードとした大小数々の音楽コンサートが開催されている。

 「世界から注目される時期に、そうしたイベントを点として線で結び、広島を芸術であふれる街にしたい。それが平和都市として広島のやるべきことと思っている」

 広島が世界へ向けてきたその国際的な発信力を生かし、このフェスを定着させ、発展させることはできるのか。壮大な思いをのせたイベントは、来年8月1日~28日に開催される。

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