近年、毎年のように大雨や台風による災害が起きています。一方で、「自分は災害に遭うことはない」と心のどこかで考えてしまっていませんか?
気象庁のデータ によると、2020年までの10年間における50mm以上の雨の降る回数は、1985年までの10年間の平均年間発生回数と比べて、約1.5倍に増加していると報告があります。なお、50mmの雨とは、「滝のように降り、全く傘が役に立たない状態」を指すそうです。
今後も災害が増えることは否定できません。また、日本は地震大国でもあります。今後、巨大地震の発生が想定される場所は、至るところに存在します。
いざ災害が発生したとき、一番大事なのは人命です。したがって、災害時には、避難することを最優先にしてください。一方で、被災後の生活を再建させるためには「お金」が必要です。災害への備えとして、「お金」に目を向ける必要もあります。では、どのように備えたらよいのでしょうか。
そこで今回は、災害への「お金」の備え方についてまとめてみたいと思います。
2500万円の自宅再建に、400万円の公的支援という現実
大規模災害により自分の家が全壊した場合、再建にはいくらお金がかかるのでしょうか。内閣府の調査 により、公的支援だけでは足りない現実が浮き彫りにされています。
調査によると、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は、平均で約2500万円。対して、公的支援で受給できる金額は約400万円にとどまったそうです。不足額は2100万円となり、ほかにも家財の購入や引っ越し費用などが、実際には別途必要となります。
住宅ローンを抱えていれば、家は失うけれど、ローンのみが残るということも起こり得るでしょう。さらに、家を新築すれば、新たに住宅ローンを組み、二重のローンを抱える可能性も考えられます。もちろん、火災保険や地震保険に加入していれば、負担は減るかもしれませんが、これが災害により家が全壊した人の現実だということを認識していただきたいと思います。
災害時に給付される公的支援
前述の通り、災害で家を失ってしまうと、公的支援だけでは生活の再建が難しいのはわかっているものの、やはり受け取れるものを知っておくことは大切なことです。災害時に支給される公的給付にはどのようなものがあるのか、確認してみましょう。
▼被災者生活再建支援制度で最大300万円
災害によって住宅が全壊するなど、生活できない状態になるくらいの被害を受けた世帯が受け取れるのが「被災者生活再建支援金」です。損害の状況によって、25万円から最大300万円まで支給されます。支援金の使い道は限定されておらず、自由に使うことが可能です。
《被災者生活再建支援制度の対象となる被災世帯》
- 住宅が「全壊」した世帯
- 住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
- 災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
- 住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)
- 住宅が半壊し、相当規模の補修を行わなければ居住することが困難な世帯(中規模半壊世帯)
▼住宅の応急修理で最大59万5000円
被災した住宅の居室、台所、トイレなど、日常生活に必要な最小限度の部分の応急的な修理で利用できるのが「住宅の応急修理制度(PDF28枚目)」です。災害救助法に基づく制度となっており、都道府県または市町村が業者に委託して実施されます。
限度額は、大規模半壊または半壊、半焼、流失の世帯で、59万5000円です。
罹災証明書などの必要書類を行政の窓口に持参し、申し込みの手続きをします。
▼災害弔慰金で最大500万円
国の支援制度として、災害により死亡した方の遺族には、災害弔慰金が支給されます。支給額は、生計維持者が死亡した場合、市町村条例で定める500万円以下。そのほか、災害による負傷や疾病で、精神または身体に著しい障害が出た場合には、災害障害見舞金が支給されます。見舞金の額は、生計維持者が障害を負った場合、市町村条例で定める250万円以下となります。申し込み先は、いずれも市町村の窓口です。
▼社会保険から受け取れる給付
国民年金や厚生年金に加入している方が死亡した場合は、それぞれの年金制度から遺族年金を受け取ることができます。また、一定の障害状態になった場合は、障害年金が支給されます。
ほかにも、雇用保険に加入している方は、失業給付を受けられることもあります。対象は、災害救助法の適用を受ける市町村に所在する事業所に勤務しているなど、一定の条件を満たす方です。
上記のお金以外にも、自治体などから義援金や弔慰金などが受け取れる場合もあります。