ヘルスケア

中等症で感じた「死」、感染の男性が訴える恐怖

 新型コロナウイルスの新規感染者数は全国的に減少に転じたものの、中等症の患者数は依然として高止まりが続いている。大阪市西区のフリーフォトグラファーの男性(49)は8月下旬に感染し、中等症と診断された。急激に上がる体温、逃れられない息苦しさ…。「死ぬかもしれないと思い、恐怖感しかなかった」と自身の体験を語った。

 8月21日朝、男性は体温が38度近くまで上がり、倦怠(けんたい)感を覚えた。自宅近くのクリニックを訪ねてPCR検査とエックス線検査を受け、翌22日に感染が判明。肺炎であることも分かり、医師から「中等症だ」と告げられた。

 男性は仕事柄、人に接する機会が多かった。このため、マスク着用や手洗いの徹底など、基本的な感染対策には気を配っていたが、ワクチン接種はまだだった。高血圧症の持病があり、主治医と相談の上で、接種のタイミングを模索していた中での感染判明だったという。

 保健所からの連絡を待つ間、自宅療養となった。この間、症状は徐々に重くなり、体温は39・8度まで上昇。息苦しく、横たわっていても「胸を上から誰かに押さえつけられているようだった」。次第に重くなる症状に、「死」を意識したという。

 24日、再びクリニックを受診。医師が保健所と相談し、入院が決まった。独りで闘病しなくてすむことに安堵(あんど)したが、その一方で「このまま治らず、家には二度と帰れないかもしれない」との恐怖も胸をよぎった。

 入院先の大阪市内の病院では4人部屋で過ごしたが、誰かが退院するとすぐに新たな患者が入ってきた。入院中に自宅療養中の感染者が亡くなったとする報道をみて、「一人で心細かっただろう」と心が痛んだ。

 抗ウイルス薬の投与を受けた男性は、スタッフの献身的なケアもあり、重症化することなく約1週間で退院。「医療従事者のおかげで回復できたと思う」と感謝する一方で、「中等症でここまで重い症状になるとは思わなかった」という。

 現在、大きな後遺症はないものの、歩く際に息が上がったり、疲れやすくなったりしたことを感じている。男性は「自分がかからないと分からないことばかりだった。まだ感染していない人には、どこにでも感染するリスクがあるということを知ってほしい」と訴えた。(石橋明日佳)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus