試乗スケッチ

ロードカーの名を冠した「ノートオーラNISMO」 上質さの中にある攻撃的な走り (2/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 ノートオーラの別の顔

 外観から想像するように、走りは研ぎ澄まされている。搭載するエンジンは直列3気筒1.2リッターだが、e-POWERの特徴はエンジンが直接駆動輪に直結せず、あくまで発電機としてのみ機能する。それが蓄えたバッテリーパワーで電気モーターを駆動。そのスタイルには違いはなく、ノートに比較してパワーアップはない。だが、制御が攻撃的に細工されており、アクセルの踏み加減以上に加速が鋭くセッティングされているのだ。だから、走り始めた瞬間から強烈な加速度が襲ってくるのである。

 サスペンション系の味付けも攻撃的で、スプリングは25%~36%も強化されているから、コーナーを攻め込んでもロールがほとんどしない。ステアリングの切れ味は鋭く、ワインディングを攻め込みたくなるフットワークなのである。

 ノートオーラはノートをベースに上質感ある走りが信条であり、「新たなプレミアムコンパクトを創造する」と宣言するように、大人の雰囲気が備わっている。そんなノートオーラを攻撃的に仕立てたことで、また新たなノートオーラの別の顔を見たような気がした。

 ちなみに、オーラは2WDと4WDが選択できるものの、ノートオーラニスモは2WDのみに限定している。その理由は車重にある。ノートオーラの4WDは2WDに対して約130キロ重い。これは軽快な走りを完成させるためには致命的な数字だ。それを嫌って2WDとしたのである。

 ここに興味深いデータがある。実は先代のノートにもニスモ仕様は設定されていた。2014年9月デビューであり、ノート内のグレード別構成比率はノートニスモが約8%という幸先の良いスタート。だがそれだけにとどまらず、ノートニスモにe-POWERが加わった途端に数字が跳ね上がる。ピーク時には約14%に達したほどの成功モデルなのだ。

 スポーツカーならまだしも、経済性を売りにするコンパクトハイブリッドモデルの約14%は異例だと言わざるを得ない。つまり、経済性が武器のe-POWERと攻撃的ブランドのニスモは意外に親和性がある。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】こちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。

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