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時短協力金で子供たちを遊園地に招待 新潟ラーメン店主の粋な計らい

 新型コロナウイルス対策として、営業時間の短縮に協力した飲食店に自治体から支払われる時短協力金。使い道は落ち込んだ売り上げの穴埋めが一般的だが、新潟県内のラーメン店主は全額を投じ、一人親家庭の親子100人を遊園地に招待する企画を市や地元企業の協力を得て立ち上げ、話題になっている。この企画に込めた思いを店主に聞いた。

 動画がきっかけ

 企画したのは、同県阿賀野市のラーメン店「だしの風食堂」店主の五十嵐正人さん(48)。9月3日から2週間、営業時間を午後8時までに短縮した協力金35万円を使い、一人親家庭の親子100人を10月3日、市内の大型遊園地「サントピアワールド」に昼食付きで招待する。

 企画のきっかけになったのは、北海道のレストランのオーナーシェフが動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿した動画だった。動画は、新型コロナの影響で販売不振に陥った業者からシェフが酒を仕入れ、その酒でスイーツを作って販売するというもの。

 五十嵐さんはこれを見て「同じ飲食業に携わる自分もチャンスがあったら、コロナに苦しむ人を救うようなことをやってみたいと思った」という。

 協力金が背中押す

 時短協力金が五十嵐さんの背中を押した。

 「時短要請が出て以降、夜だけでなく日中のお客さんも減ってしまった。ただうちはもともと午後9時閉店で、時短で1時間早まるだけだったので、協力金はもらえないだろうと思っていたら、もらえるとのことだった。もらえないと思っていたお金なので、何かに生かせないかと考えた」

 一人親家庭がコロナ禍で苦しんでいると知り、遊園地で思いっきり遊んでもらい、笑顔にしてあげたいと考えた。店の客でもあるサントピアワールドの高橋修園長(64)に相談したところ「おもしろい企画だね。昼食のカレーも付けよう」と快諾。35万円で100人分の1日フリーパスと昼食を付けてもらう企画になった。

 同園は昭和51年、県内初の遊園地として開園。歴史はあの東京ディズニーランド(58年開園)より古い。山の裾野にあり、69ヘクタール(東京ドーム約15個分)の敷地内に32のアトラクションがある。

 高橋さんは、メリーゴーラウンドの馬の乗り物の前に大型扇風機を設置して強い風を吹かせ、“爆走メリーゴーラウンド”と銘打った企画をやるなど、思わず笑ってしまうようなユニークな催し物を常に展開していることで知られる。

 企画では、遊園地招待とは別に、10月中旬に一人親家庭に無料で弁当を配布することも加えた。さらに、地元の農家組織「AGRIPEACE(アグリピース)」から、植物繊維が豊富で腸内環境を整える効果があるとされる「もち麦クッキー」100袋が提供され、企画に参加した親子にプレゼントされることにもなった。

 市も協力

 今回の企画には阿賀野市も協力。市が管理する一人親家庭の住所などの個人情報は外部に出せないため、市がラーメン店に代わって対象となる家庭に企画への参加申込書を配布した。市内に一人親家庭の親子は100人ほどいるとされ、申込書を「だしの風食堂」まで持参した人に、10月3日の遊園地フリーパス・昼食引換券や、10月中旬のお弁当引換券が手渡される。

 五十嵐さんは「企画参加者には思いっきり遊園地を楽しんで笑顔になってもらいたい。今回の企画以外にも、子供たちを笑顔にするイベントをどんどんやっていきたい」と話している。(本田賢一)

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