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国道最高地点 シガヒルの悲願乗せて「ろんぐらいだぁすとーりーず!」とコラボ

 初開催が昨年予定されていた自転車山岳レース「志賀高原ヒルクライム(シガヒル)」が2年連続で、新型コロナウイルス禍の影響で中止となった。国道最高地点のある渋峠という“聖地”での開催を楽しみにしていたファンや地元関係者の落胆は大きい。それでも開催日に用意していたささやかな記念イベントが予定通り始まり、多くのサイクリストたちが集っている。「来年こそは」。関係者は平穏な日常の訪れを願う。

 構想10年

 渋峠は、長野県山ノ内町と群馬県中之条町にまたがり、標高2172メートルは全国国道の最高地点だ。シガヒルは、長野側の志賀高原サンバレー駐車場から渋峠ホテルまでの13・1キロを最短1時間程度で登るレース。地元自治体や観光協会で作る実行委員会が主催する。

 同レースは、構想から10年をかけて、ようやくこぎつけた。スキーで有名な志賀高原がグリーンシーズンの目玉イベントとしてシガヒルの検討を始めたのは平成24年。当時、県内の乗鞍や美ケ原で自転車レースが行われていたが、県北部では初の試みだった。

 しかし国道を通行止めにするための警察の許可は簡単には下りず、まずは通行止めが不要な「志賀高原ロングライド」を26年から開始。実績を積み重ねようやく令和2年開催に念願のOKが出た。その矢先に、コロナ禍が広がり、道を阻まれた。

 今年も開催の1カ月前まで決断を待ったが、泣く泣く見送った。スキー場や温泉街を主要産業とする同町は「安心・安全に観光客を迎えることを何よりも大切にしている」と町観光商工課の堀米貴秀係長はいう。

 主人公も到達

 一方で、2年連続の中止の中で、予定通り実施したのが日本国道最高地点到達証明書の特別版発行だ。

 県境をまたいで建つ「渋峠ホテル」のフロントでは、普段から証明書を100円で販売している。9月12日から2千枚限定で、シリアルナンバー入りのシガヒルバージョンを300円で発行している。売り上げの一部はシガヒルの運営や志賀高原のサイクルツーリズム推進に充てるという。

 デザインには自転車漫画・アニメ「ろんぐらいだぁすとーりーず!」(作・三宅大志氏)の主人公らが、渋峠を訪れたイメージを採用した。

 5時半に来た人も

 9月12日、午前9時の販売開始時には40人ほどが列を作っていた。先頭は新潟市の男性会社員(48)。同漫画ファンの中学生の娘に頼まれ、自動車で朝5時半ごろに到着したという。

 行列の多くはサイクリスト。麓から自転車を漕いできた新潟県三条市の五十嵐将平さん(44)はレースでなく、こうしたサイクルイベントの愛好者。「競い合うより、途中で景色を見たり、うまいものを食べて完走する方が楽しい。でもイベントも少なくなった」と話す。群馬側の草津町から漕いできた埼玉県の男性とは、イベントの常連同士で再会を喜び合った。

 2人とも、販売開始を「ろんぐらいだぁすとーりーず!」の公式SNSで知った。五十嵐さんは同漫画でいろんな場所を走る楽しみを知り、兵庫県の淡路島まで出かけたことも。特別版の企画はサイクリストの心をしっかりとらえたようだ。

 国立公園内にあり、トレッキングや環境学習と同様に自然に負荷をかけない観光コンテンツとして積み上げてきたサイクルツーリズムの集大成。「もう志賀高原の悲願です。地域の人の願いをしっかり実現したい」と堀米さん、来年こその思いを強くしている。(原田成樹)

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