圧倒的な燃費の良さ
2019年にレクサスは「電動化ヴィジョン」を発表しており、その具体がこの新型レクサスNXである。新たなフェーズに駒を進めたのである。
あきらかになったボディは現行型のコンセプトを踏襲している。評価の高いパッケージと走り味をそのままに、新時代に相応しく熟成させた印象である。ボディサイズは前後左右わずかに拡大している。全長は4660ミリで現行比で+20ミリ、全幅は1865ミリで+20ミリ、全高は1640ミリで+5ミリ、ホイールベースは2690ミリで+30ミリも拡大した。
全体的なフォルムは現行型デザインを踏襲しているが、あきらかに存在感が増した印象である。“塊”としての印象がさらに強調されている。先立ってデビューした「レクサスIS」も旧型のフォルムを踏襲していながら、あきらかに力強いスタイルとなって誕生したのと同様、レクサスデザイナーの筆捌きは巧みで、印象を変えずに新鮮味と進化を感じさせる。高度なセンスを感じさせるのだ。
話題のPHEVは直列4気筒2.5リッターエンジンと組み合わされる。総電力量18.1kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載、フロントとリアにモーターをそれぞれ積む。予想ではおそらく100キロほどのEV走行が可能だろう。もちろんEV走行だけではなく、通常のハイブリッド走行も可能だ。よしんば駆動用バッテリーが空になったとしても、いや、通常走行では耐えず補充しているから空にはならないが、圧倒的な燃費を誇ることだろう。
世界的な半導体不足や新型コロナウイルス禍によるサプライヤーの生産体制の滞りなど、工場出荷の停滞はやむを得ない。だが一方で、地球温暖化をはじめとした環境への手立ては待ったなしである。プレミアムブランドのレクサスに、PHEVが加わり全方位的なパワーユニットを揃えたことの意義は深い。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。