18日行われた与野党9党首による討論会では、格差是正を重視した岸田文雄首相の「新しい資本主義」に対抗し、各党が現金給付を始めとした分配政策を競い合った。財源確保や成長戦略などの議論は深みに欠け、国民の歓心を得やすいアピールが大勢を占めた。
衆院選では新型コロナウイルス禍で厳しい家計や格差の拡大に配慮し、与野党が現金給付を訴えている。
首相は「より困った方々に支給すべきだ。できるだけ早く必要とされる方の手元に支給することは可能だ」と述べ、補正予算で困窮世帯への現金給付を実現し、申請なしでも給付が受けられる「プッシュ型」で迅速に届けたい考えを示した。
公明党の山口那津男代表も18歳以下の子供に1人当たり10万円相当を支給する「未来応援給付」の実現を訴え、首相が「しっかり調整したい」と応じるなど与党で給付推進を演出した。
これに対し、野党側からも現金給付や減税の必要性が強調され、日本共産党の志位和夫委員長は「コロナで傷ついた暮らしを立て直すため消費税5%への減税は最も効果的」と訴えた。
議論になったのはこうした分配政策の中身だ。国民民主党の玉木雄一郎代表は岸田政権の新たな給付策について、「早くても(来年の)桜の咲くころになる。これでは困った人を助けられない」と指摘して、支援の迅速性に疑問を呈した。
首相は立憲民主党が主張する時限的な消費税減税について「短い期間で減税と増税を繰り返すと(買い控えなど)副作用が大きくなる」と指摘。同党の枝野幸男代表は総合的な税制見直しを併せて行うとしつつ、「(減税)期限が切れるときは一定の負担をお願いすることになる」と述べた。
現金給付や減税が“バラマキ”だと批判も出ているが、コロナ禍で国民の暮らしを守る緊急支出は国債で対応すべきとの立ち位置は与野党がおおむね一致。財源確保で首相が先送りした株式売却益など金融所得課税の強化や大企業の優遇税制見直しを挙げる声も出たが、盛り上がらなかった。
2050年の脱炭素化に向けたエネルギー政策も論点になった。首相はデジタル化で電力使用量が爆発的に拡大した際、「(天候に左右される)再生可能エネルギー一本足打法では応えられない」と説明。電力安定供給のため原子力発電も「選択肢の一つ」と述べ、まず再稼働を進め、建て替え(リプレース)についても議論する考えを示した。