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都内飲食店の制限緩和「やっと通常に」 期待と不安が交錯

 東京都が21日、千葉、埼玉、神奈川各県に続き、新型コロナウイルスの感染対策のため飲食店に要請してきた営業時間短縮や酒類提供の制限などを25日に解除することを決めた。都内の繁華街では、約11カ月ぶりとなる通常営業に飲食店関係者が喜びの声を上げる一方、都が独自にワクチン接種証明の確認を求めることへの戸惑いも広がった。

 JR新橋駅(港区)近くの和食料理店「升亀 新橋店」では、店主の寺田多紀子さん(64)が「制限がなくなるのは良かったの一言。お酒を飲みにくるお客さんが増えてほしい」とと笑顔を見せた。

 感染対策を実施した認証店として、緊急事態宣言が解除された今月から、酒類提供は午後8時まで、営業は9時までという要請に従って営業を再開。週末には6割ほどの座席が埋まるなど、徐々に客足は戻ってきているものの、満席になる日は、まだない。

 「職場などの大人数の宴会が再開してくれれば、街の様子も大きく変わるのではないか」と寺田さんは期待を込める。

 都は同席する人数の制限も撤廃するが、5人以上の会食の場合はワクチン接種証明の提示を求める。確認作業の手間は店側の新たな負担となるため、「東京立ち飲みバル」の料理長、木沢慎二さん(48)は「忙しい時にいちいち接種証明を確認できるのか。現実的な政策なのかは疑問だ」と首をかしげる。

 それでも、営業時間が午後9時から通常通りの11時に延びることには、期待感が高まる。店内は席数を減らし、バーカウンターには店員と客との間に、自作のビニールカーテンを設置するなど感染対策はこれまで通り万全を期すという。

 「仕事帰りに遅い時間まで飲む文化が戻ってくるのかは正直わからない。でも、お客さんには『あと数日で通常営業に戻ります。サービスするのでまた来てください』と声をかけている」(木沢さん)

 一方、府中市のカフェレストランは時短要請が解除されても、当面はこれまで通り午後9時までの営業を続ける。男性店長(31)は「従業員のシフトを来月までほぼ組んでしまっている。人々の生活リズムが戻ってきてはじめて店を遅くまでやる意義があるのではないか」と話した。

 「認証店と非認証店の区分けには納得がいかない」と不満を口にするのは、板橋区で認証を受けていないバーを経営している男性(42)だ。都は、宣言解除後も認証を受けていない店に求め続けていた酒類提供の自粛要請を緩和する。ただ、提供時間は午後9時までに限られる。

 男性によると、自粛要請に応じた店に支給される都の協力金だけでは経営を維持していくのが難しくなり、今年6月から都の要請に従わず、通常営業を再開してきた経緯がある。

 男性は「アクリル板は設置しているし、検温も消毒も徹底している。従業員の生活があるから、再開しただけなのに、今更、都に従って認証を受ける気にもならない」とこぼした。

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