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引退続くレトロ車両、500号は一般道を花道に

 香川県の高松琴平電気鉄道(ことでん、高松市)が保有していたレトロ電車ですでに引退していた5000形500号が高松市の建設会社に譲渡されることが決まり10月13日未明、一般道路を使って車体が移送された。ことでんは、大正末期から昭和初期に製造された4両のレトロ車両を保有。90年以上にわたり運行されて地元住民や鉄道ファンらに愛されてきたが、2年前に「順次引退」が発表されていた。レトロ車両は解体する構想もあったが、譲渡先などが決まり、それぞれが静かな余生を送ることになった。

 未明の一般道を移送

 経済産業省の近代化産業遺産に認定されている500号は令和2年9月のイベントを最後に引退していた。同社オリジナル車両で、デビューは昭和3年だった。

 500号が保管されていた高松市の同社仏生山(ぶっしょうざん)車両所車庫では10月12日午前、車体を台車と分離し、クレーン1台でつり上げる作業が始まった。

 担当するのは日本通運の約10人の専門チーム。車体を傷つけないように保護材を使い、バランスが取れるように慎重に作業。車体をつり上げて牽引(けんいん)車に載せ移動させてトレーラーと連結させた。作業は2時間以上かかった。

 出発は13日午前4時半。鉄道ファンら約30人がカメラを構える中、誘導の車に前後を挟まれ、青色点滅灯をつけたトレーラーに載せた500号が一般道をゆっくりと移動。目的地まで約10キロを40分強かけて運ばれた。朝になって、クレーン2台を使って車体を設置場所に移し、最後はフォークリフトと人力で設置を完了させた。

 譲渡を受けたのは高松市の建設会社「南部開発」の杉田数博社長(59)。会社敷地内の屋根付きの場所に置かれた。

 マニア垂涎(すいぜん)のポルシェなどの旧車約10台のコレクターであり「古いものが好き。500号もなくしてはならないと思って静態保存での譲渡を申し出た。無事に着いてよかった。一般の方にも見ていただけるように展示を考えたい」と話していた。

 お遍路さん休憩所に

 500号より早く昨年12月に譲渡された「20形23号」は、高松市郊外でお遍路さんの休憩所として活用されている。

 天井のひどい雨漏りが判明し、今年6月に成立したクラウドファンディング(CF)での調達資金で建造していた木造屋根は9月下旬に完成。休憩所を運営するNPO法人「88(エイティエイト)」の笹尾正(まさ)福(とみ)代表(66)は「台風に襲来される前に完成してよかった。これからは23号と一緒に安心して、お遍路さんや鉄道ファンをお迎えできる」と喜んでいた。

 23号は大正14年に登場した大阪鉄道(現・近鉄南大阪線)でデビューし、昭和36年にことでんが譲り受けた。昨年5月に引退予定だったが新型コロナ禍の影響で延び、9月に500号とともにさよならイベント。

 ことでんは「車両を大事に、なるべく長く使い続ける」考え方でレトロ電車4両も特別運行やイベント車両として活用してきたが、増車計画検討に当たり、引退を決断。令和元年5月に公表した。

 担当者は「車内、車外ともに木材が使用され、部品調達やメンテナンスの難しさがあった。ことでんのシンボル的な存在で、技術担当者らの愛着は強く、断腸の思いだった」と話す。

 さよならイベント、今度こそ

 残りの2台の「1000形120号」と「3000形300号」は大正15年製造の同社オリジナル車両でこれも近代化産業遺産に認定されている。

 今年5月にさよならイベントをする予定だったが新型コロナ禍の影響で延期に。11月3日にイベントが行われる予定だ。

 運輸サービス部の担当者は「さびしさ半分、お別れの機会を設けることができた安堵(あんど)の気持ちが半分」。イベント後は仏生山工場の中だけで作業車として運用するという。(和田基宏)

 ラスト運行は2両を連結し、琴平、長尾の両線で、11月3日午前8時25分、瓦町発で運行。特別運行のヘッドマークを掲げる。

 ラスト撮影会は整理券を発行し、入れ替え制で行う。問い合わせはことでん運輸サービス部(087・863・7300)。

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