カーボンニュートラル社会への道筋の一つ
空では機体の軽量化が不可欠で、運動性能を高めるためには軽い方が有利。高回転で唸るエンジンは冷却性能も求められる。つまりレクサスの技術と航空技術には共通項が多い。戦いのステージが地上か空かという違いがあるだけで、クルマとエアレースに求められる能力に違いはないのである。そこがレクサスと室屋選手がチーム契約を締結した理由なのだ。
実際にレクサスは、室屋選手から空力的なデータを得てクルマの開発に役立てている。一方の室屋選手も、クルマの知見を利用して新たな「技」を開発する。
レクサス機の操縦桿には、レクサスが人間工学的な知見により開発した「操縦桿グリップ」が装着されており、より正確で素早い操作を後押ししている。空力的解析による新技「新ターン」を完成させたのはそれがあったからだ。というように、陸上のクルマと空のエアレースは技術的に親和性が高い。
これらは、世界的な風潮であるカーボンニュートラル社会の実現への道筋の一つでもある。エアレースばかりではなく、次世代モビリティに繋がる人材育成にも取り組むという。地上のモータースポーツを制したレクサスが、次なるプロジェクトとして空に目を向けたことが興味深い。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。