アップルNewsは「長城」に屈したか 情報遮断?自主規制?…憶測呼ぶ

 

 当局の情報遮断か、はたまた自主規制か-。米アップル社が今年9月に米国などで提供開始した無料ニュースアプリ「News」が、中国国内では利用できないことが分かり、欧米では臆測が臆測を呼ぶ事態に発展、大きな話題になっている。

 不都合な情報を根こそぎシャットアウトする中国の検閲システム「グレートファイアウオール(防火長城)」にやられたというのが大方の見方だ。しかし、中国市場を重視するアップル社の自主規制とする声も出始めているが、真相はなおやぶの中だ。

 米で契約、香港では利用可

 アップル社が提供する「News」は、新しい基本ソフト「iOS9」の目玉機能の一つ。このアプリは、自分で使いやすいようにカスタマイズでき、興味のある米国の大手紙や雑誌の記事をピックアップする機能を持ち、アイフォーンなどアップル社の端末で手軽に読める。

 現在、このサービスを利用できるのは、米アップル社との契約者だけで、原則、全世界で利用できるという。英国とオーストラリアでは試験運用中、日本や中国などアジアでは提供されていない。

 香港の英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)や米CNNテレビ(いずれも電子版)によると、利用者が中国国内で「News」を起動させようとしたが「現在更新できません。ニュースはご使用の地域では使えません」というメッセージが表示されたという。しかし、香港やその他の国では、問題なく利用できた。

 「見出しは残っているが」

 北京在住の教育コンサルタント、ジョアニー・チェンさんは、9月に新発売されたアイフォーン6を購入。クレジット決済でアップルと契約を済ませ、すでにインストールされている「News」を使い始めた。

 当初は、いろいろなニュースを閲読できたが、購入翌日にはアプリが使えなくなっていた。チェンさんは「ニュースの見出しは残っているけど、更新は全くできません」。

 中国国内で「News」が利用できない状態になっていることについて、アップル社はコメントを控えている。だが、複数の欧米メディアは、検閲システムによる情報遮断との見方を報じている。

 中国では、検索サイトのグーグルや、フェイスブック、ツイッターなどSNS、欧米のニュースサイトは検閲システムにより閲覧できないようになっている。

 「News」もこれらのサイトと同じ扱いを受けている、というのだ。

 収益源配慮で自主規制

 だが、一方で、別の見方を報じるメディアも出始めた。ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は、「アップル社にとって、中国は米国に次ぐ第2位の収益源。今年第3四半期(の中国での売り上げ)は130億ドル(約1兆5500億円)を記録。

 そのためアップル社は、『News』アプリの提供には慎重な姿勢をみせている」と指摘して、“自主規制”を示唆した。

 中国へのニュース配信をめぐり、米ニューヨーク・タイムズ紙やウォールストリート・ジャーナル紙、ロイター通信など主要な欧米メディアは、中国語版サイトの構築に多額の投資をしている。しかし、中国の度重なる検閲により、改良や修正などを強いられているのが実情だ。

 だからこそ、「中国でこのサービスを無効にすることで(検閲)問題を回避している」(ニューヨーク・タイムズ紙)との見方が出るのも仕方があるまい。

 情報遮断の対応で、沈黙を続けるのは金ならぬ「禁」だということを、皮肉にも「News」はあぶり出した。(SANKEI EXPRESS