最初は肥満やメタボ対策のために走り始めたものの、走ること自体が目的になってしまう人もいます。日本人は勤勉で、まじめすぎる人が多く、「走るんだ」と決めたら、雨の日もカンカン照りの日も、少し具合が悪い時ですら走り続けてしまいます。走らないことがサボることにつながるように感じて、絶対に休んではいけないといった、強迫観念に近い焦りを感じてしまうのかもしれません。
冒頭の報道では、1週間に30マイル(約48キロメートル)以上のランニングをすると、運動のメリットが消えて有害にすらなるということが示されていました。週48キロメートルということは、月間200キロメートルぐらいの距離になります。市民ランナーでもこれぐらい走られている方は多いでしょう。けれども、運動で消耗あるいは憔悴(しょうすい)するようでは本末転倒です。
レースで人よりも速く長く走るといった比較ではなく、どれだけ健康に長生きするかという「人生のマラソンに勝つことが大切」と、私は患者さんに説明しています。健康に良い食事と効率的で適度な運動を、スマートに心がけることにしましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)