劇中の人物も当時の人々のたくましさを鏡のように映す。ナイトクラブのスター歌手、リノ(瀬奈じゅん)や指名手配ギャングのムーンフェイス(鹿賀丈史)、ギャングの情婦アーマ(玉置成実)ら酸いも甘いもかみわけた面々は、船内で巻き起こる騒動を楽しむかのようだ。
全編を彩るのは、米ミュージカル界に名曲の数々を残した音楽家コール・ポーター(1891~1964年)の粋で心弾むメロディー。「作品一番の魅力は、何といってもポーターが手がけた楽曲。でも実はシンプルでそっけなく、それだけ歌い手自身の技量が試される」。圧巻は、タイトル曲に乗せ30人以上が一斉にタップを踏む第1幕のフィナーレ。迫力のダンスシーンだ。
「帝劇というひのき舞台でやるなら、大がかりでなければ。歌って踊れるキャストとともに、日常にはないスケールの楽しさをとことんお見せしたい」
震災から2年7カ月。明るい未来はまだ描けない。「そんな時こそ演劇人の出番。人々を元気にしたい」(文:津川綾子/撮影:伴龍二/SANKEI EXPRESS)