【ワインのこころ】
110周年を迎えた日比谷「松本楼」の記念イベントのなかで、私は10月開催の会を担当させていただきました。
シャンパンメゾン「G.H.マム」(以後マム)を基本に、松本楼とマムのなかに流れる“男気”に注目し、マムが登場する映画「カサブランカ」のリックとルノー署長の“Beautiful friendship”も盛り込みました。
松本楼の歴史で、長崎県出身の梅屋庄吉の存在は外せません。彼は清朝政府を倒した辛亥革命の指導者、孫文を生涯かけて支援し続けた人物であり、小坂文乃副社長の曽祖父にあたる方です。
長崎を出て、シンガポールにわたり、映画ビジネスで大成した庄吉が香港で写真館を経営していた1895年、孫文に出会います。植民地化が進んでいた中国を憂い、同胞が手を結び強いアジアを作らねばならないという思いを抱いていた彼は、孫文の革命の意志に共感、私財を投じます。貨幣価値に換算して1兆円近くの額でした。見返りなしの男気です。