ルク監督は「2008年の米大統領選に触発された」と脚本化の発端を語る。執筆に行き詰まっていたとき、ふと目にしたのが米大統領選候補者が繰り広げるディベート、テレビ討論会だった。「諸課題について相手を厳しく攻撃しつつも、候補者同士がハイレベルなやり取りを展開しているのが魅力的だった。香港の警察映画では事件現場が舞台になることは多いけれども、警察上層部の知恵比べは描かれていないのではないか」
聞けば、警察幹部がピンチに陥ったときの心構え、所作、部下への指示の出し方にいたるまで、鑑賞者が見過ごしがちな部分も忠実に再現したという。どう取材したのか。ロクマン監督は「無名の僕らの取材には誰も応じてくれないから、警察官の友人を質問攻めにした」と振り返った。ただ、守秘義務に触れる核心的な部分に差し掛かると友人はどうしても言葉を濁すので、ロクマン監督はアプローチの方法を変えた。
「物語では警官が車ごと奪われるが、起こりうると思いますか?」「もしもこんなケースが起きたとしたら、警察はどう対処するでしょうか?」「こんなとき上層部はどんな会議の進め方をすると思いますか?」。仮定の話として聞けばガードも緩み、あらゆる対処法を語ってくれるのでは-との読みは当たった。物語はフィクションでも、登場人物たちが生き生きとしている秘密はそこにある。