「寝る直前まで台本を読んで、翌日、演出の小川(絵梨子)さんに『これでどうでしょうか』と相談して演じる。そんな日々でした」と、稽古の様子を振り返った谷原章介さん(寺河内美奈撮影)【拡大】
ドニーとデルが話す言葉は、幼いジョンにはクリプトグラム(暗号)のように響く。家族に何が起こっているのか。不安な思いを、ジョンは言い表そうとするのだが、幼く、うまく言葉にできない。リビングのソファを中心に、3人の会話は、少しずつ論点をずらしながら進み、物語はスリリングに展開していく。状況説明を省いたセリフの連続に、観客は先行き不安な思いを抱き、いつしかジョンに自らの思いを重ねて舞台を見つめることになる。
谷原も、最初は芝居を客観視できずに“迷いの森”に入り込むような感覚になった。「わかりやすいストーリーや、結末や解が示される物語に人は安心を覚えますが、今回は全くそんなところがない」。だが、むしろその先行き不透明な流れこそ「日常そのもの」だと気付いたという。「よく考えると、自分を客観視したり、答えが提示されることなんて、日常の中で、めったにないですからね」