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「甘いのが伝統」英国ジャム論争 政府が砂糖含有率引き下げ推奨

2013.11.17 00:01

 英国を訪ねたことがある人なら、「なぜこんなに甘いのだろう?」と朝食のジャムの味に驚く人も少なくないが、現在英国では、伝統的な朝食に欠かせないジャム作りをめぐり、議論が沸騰している。政府が、欧州連合(EU)の基準に合わせて砂糖の最低含有率を下げて、「甘さ控えめ」のジャムの生産・販売・輸出を推奨する方針を打ち出したためだ。しかし、反対派は、砂糖を減らせばジャムの品質が低下し、さらには「英国式朝食の終(しゅう)焉(えん)につながる」と危機感を募らせている。

 英国では朝食として、こんがり焼けた薄いトーストにジャムやバターをたっぷり塗って食べるのが一般的だ。そして、1920年代以降、フルーツジャムやマーマレードの名称で製品を販売するには、砂糖の含有率(重量比)が「60%以上」であることが法律で定められている。日本では通常、素材となる果実の甘みに応じてジャムの砂糖含有率は30~50%ぐらいであるから、60%以上というのはいかに甘いかが分かる。

 ■EU基準の50%に

 砂糖含有率が高いのは、甘いものが比較的好きな英国人の嗜(し)好(こう)にもよるが、主な理由の一つは保存を利かせやすいためだ。英国では、完成した時に果実の原型が比較的保たれているプレザーブというタイプのジャムが好まれるが、この場合、果実を長時間煮込む製法はとれないため、保存しにくいという難がある。そこで保存性を補うために、砂糖の含有率が高められている。

 だが、英政府は先月、EUの基準に合わせて最低含有率を50%に下げる方針を発表。下げれば、業界が生産や販売・輸出面でより柔軟に対応でき、景気回復を後押しすると主張した。

 これに対して、頑固者が多いことで知られる英国の国会議員の一部が猛反発。AP通信によると、先日、下院で行われたこの問題に関する審議では、連立与党第二党・自由民主党のテッサ・マント議員(54)が「砂糖を減らせば、(保存のために)果実をより長い時間煮込まねばならず、ジャム特有の舌触りが失われ、われわれが英国ジャムとして親しんでいるものと似ても似つかなくなる」「ドイツやフランスのジャムと似たり寄ったりになってしまいかねない。ましていわんや、(糖分控えめの)米国風ジャムなんてまっぴらご免だ」とまくしたてた。

 ■「控えめ」が普及

 この経緯が「ジャム戦争」「英国式朝食の消滅」などとメディアで大きく取り上げられ、全国的な大論争が起きている。ただ、英国のスーパーの店頭ではすでに、欧州大陸から輸入された「甘さ控えめ」ジャムがかなり普及してきており、「論争は大げさだ」(英国の食物史研究家のローラ・メイソン氏)との冷めた見方もある。また、英国内のジャムメーカーの間では、「英国仕様」にこだわっていては世界的潮流に取り残されてしまうという危機感もある。

 環境・食料・農村省のジョージ・ユスティス政務次官(42)=保守党=は、「全てのジャムの砂糖含有率を50%ぐらいにしようと言っているのではない。新基準でも、60%以上のジャムは相変わらず作れるのであり、『英国式朝食の消滅』というのは見当違いだ」と話す。世界的な健康志向の動きに英国の伝統を重んじる人々が古き良き「英国ジャム」に強く固執している構図が浮かぶが、結局のところ、「ジャム論争」の答えは政治家でも官僚でもなく消費者が握っている。

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