サザビーズはこれまで、香港市場には進出していたが、中国本土での競売は外資だけでは参入が禁じられているため、機会がなかった。そこで、国有企業の北京歌華芸術有限公司(歌華)と10年契約で合弁会社を作り、今回の競売開催にこぎつけた。サザビーズのライバルのクリスティーズも合弁会社を立ち上げ、やはり9月に自社イベントとしては初の中国本土でのオークションを上海で催している。
特権階級の裏金は
中国が美術品競売市場として急成長している背景には、富裕層が増え続ける中、金持ちの究極の贅沢は美術品収集だという伝統的な意識がある。さらに最近注目されているのは、富裕層たちがビジネスを通して得たチャイナマネーだけではなく、特権階級が賄賂など裏金として得た巨額の埋蔵金だ。従来、こうしたカネは不動産投機に向かい、「影の銀行(シャドーバンキング)」と呼ばれる銀行以外の融資ルートに流れていたが、最近になって不動産の不良債権化が表面化しつつあり、裏金の新たな行き場が模索されている。このため、中国経済が失速しても、美術品競売市場に向かうカネは当分増え続けるとみられている。
北京美術館のある学芸員は「美術品を欲しがる人は、本来芸術家だ。しかし、今の中国は違う。美術のことは何も分からなくても買い漁ろうとする。これがトレンドになっている」と話す。かつて日本のバブル期には、美術品を買い集める日本人が世界の顰蹙を買ったものだが、時は確実に流れた。