冒頭、女性は電話の向こうの彼に対し「別れても平気」といったふうに装おうとする。が、彼が電話を切る「その時」が近づくと、突拍子もない世間話を始めたり、弱い姿をさらけ出す。なりふり構わず話をつなごうとする様は痛々しくもある。
「思い込みも、自己愛も強く、最初は愚かな女性だと感じました。でも彼に対する愛が強すぎて、そう振る舞わざるを得なかったんだと、稽古が進むうちに気付いて、なんだか切なくなりました」。鈴木は女性像に心を寄せ「本当はかわいらしさもある、普通の女性なんです」と、かばうように言った。
「相手の声」伝える緻密演技
一見、女性の独白劇だが、「電話の先に相手がいる。実は会話劇」だという。彼の「声」は「…」の「間」で表現され、戯曲に一切、出てこない。そのため、女性を演じる裏側で、電話越しの彼の気配も伝えるという緻密な演技が求められる。
今回、三谷と鈴木は6月から緩やかな頻度で稽古を重ね、時間をかけて背景や人物を掘り下げた。その過程で鈴木は改めて「男心は女と違う」と思い至ったそうだ。