美容家、IKKO(いっこー)さん(宮崎貢司さん撮影、提供写真)【拡大】
また、家は学びの場でもあると思っています。私はこれまでに数年ごとに引っ越しをしてきました。家は私の悲しみを吸い取ってくれます。だからこそ、数年たつと、「もうこの家を解放してあげなくちゃ」と思うのです。そうして、私を受け入れてくれるエネルギーに満ちた新たな場所へと、また旅立つのです。
心を澄ませて
今回の家に決めたのは、土地そのものの持つ品格ゆえです。足を踏み入れた者が思わず居住まいを正してしまうような静謐(せいひつ)な空気があります。
それから、オーナーさんのすばらしさ。引っ越しして間もないころ、こんなことがありました。ある朝、わが家のベランダに、一羽の小鳥が冷たくなっていたのです。その夜はずっと明かりをつけていましたから、「死に場所を求めてさまよっていたところに、わが家の明かりを見つけて、ほっとして身を横たえたのかしら…」と考えると切なく、小鳥の亡きがらをエルメスの美しい箱にそっと収め、マンションの管理人さんにお預けしました。すると、後日オーナーさんから丁寧なメッセージをいただいたのです。「お気持ちをありがたく頂戴し、小鳥は敷地の一番いい場所に埋葬しました」と…。非常に美しい心を教えていただいたような気がしました。