米大リーグ屈指の強打者に、今季出場停止という厳しい裁定が下った。米大リーグ機構(MLB)は11日、薬物規定違反による出場停止処分に異議を申し立てていたニューヨーク・ヤンキースのアレックス・ロドリゲス三塁手(38)に対し、仲裁人が今季の全162試合及びポストシーズンの出場停止の裁定を下したと発表。これに対してロドリゲスは、「1人の仲裁人の判断にすぎず、薬物検査の結果にも基づいていない」などと拒否する声明を出し、法廷で全面的に争う意向を示した。ただ、法廷闘争には時間を要し、決着いかんにかかわらず今季の出場は絶望的とみられ、選手生命の危機に瀕している。
■検査は陽性なし
大リーグ機構は昨年1月、フロリダ州マイアミのクリニックが選手に禁止薬物を提供したと地元紙で報道されたことをきっかけに調査を開始。8月に、このクリニックからヒト成長ホルモンなどの提供を受けたとして、14選手に50試合以上の出場停止処分を科した。13人は争うことなく処分を受け入れたが、最も重い211試合の出場停止を言い渡されたロドリゲスだけは身の潔白を主張。異議を申し立てて、シーズンの残り試合にも出場した。
ロドリゲスには薬物検査の陽性結果がなく、薬物の売買記録などの証拠の積み重ねによる処分だったため、仲裁人の裁定が注目されていた。
試合数の軽減はあったにせよ、仲裁人が大リーグ機構の主張をほぼ支持する形で出場停止処分を決めたのは、大量の証拠に信頼性があったからとみられる。さらに、ロドリゲスの“前歴”が心証を悪くした側面も否定できない。
■ステロイドの前科
ロドリゲスにはこれまでも度々、薬物疑惑が持ち上がり、2008年にはスペイン語メディアのインタビューで、レンジャーズ時代の01年から03年にかけて、筋肉増強効果があるステロイド剤を使用していたことを認めている。当時は大リーグ機構の薬物対策がまだ甘く、ステロイド剤の使用禁止はルールブックに記載されていなかったが、ロドリゲスは「史上最高額の契約に見合う力を証明しなくてはならないという重圧を感じ、薬物に頼ってしまった」と謝罪している。
ただ、今回は、ロドリゲスは「薬物を使用したことはない。証明するために連邦裁判所で争う」との声明を発表。さらに「このような状況証拠によって『クロ』と判断されたのではたまらない。今後、私と同じような体験を他の選手がしないためにも、徹底的に戦い抜く」と言い切った。
だが、大リーグ選手会は声明文の中で「これが(覆ることがない)最終決定だと理解している」と断じ、ロドリゲスの言い分には同調していない。
■田中獲得に追い風?
ヤンキースは今季、主砲抜きで戦うことになるが、悪いことばかりでもない。米各紙は裁定が新ポスティングシステムでのメジャー移籍を目指す田中将大投手(25)獲得への追い風になると報じている。
ヤンキースは今季、規定の年俸総額を超えた球団に対する課徴金(通称・贅沢税)を避けたい意向で、大リーグ枠40人の年俸総額1億8900万ドル(約197億円)以下を目指している。出場停止期間は支払い義務が生じないロドリゲスの年俸2500万ドル(約26億円)が浮けば、田中に向ける資金に余裕ができる。ニューズデー紙(電子版)は「ロドリゲスへの裁定がヤンキースの田中獲得のドアを開いた」などと紹介している。
Alex Rodriguez 1975年7月、米ニューヨーク生まれ。米国と両親の故郷であるドミニカ共和国の二重国籍を持つ。高校卒業後の94年、シアトル・マリナーズに入団し、3年目に首位打者を獲得。テキサス・レンジャーズ(2001~03年)を経て、04年にヤンキースに移籍。これまでにアメリカンリーグの年間最優秀選手(MVP)3回、首位打者1回、本塁打王5回、打点王2回の輝かしい球歴を誇る。通算本塁打654本は大リーグ歴代5位。191センチ、102キロ。