バンド「黒木渚」(当時)のギターボーカル、黒木渚さん=2013年8月29日、東京都渋谷区(鋤田正義さん撮影)【拡大】
曲を吐き出しながらどんどん成長して、私はいつの間にか大人になった。心底大好きだった文学を追いかけて大学院に進学もしたし、就職活動をして市役所の職員にもなった。だけど、最終的に私のところに残ったものは音楽だった。予想外だったとしか言いようがない。まさか自分が音楽家として生活しているなんて、19歳の私は考えてもみなかった。まっとうに生きてきたつもりだったけれど、最後の最後で私は直感に従って行動したのだった。一生安定して暮らせたはずなのに、それを捨てて東京へやってきた。
全てを解放する
それでも私は幸せだ。音楽の奴隷として生きている自分が好きだ。朝から晩まで、目に入るもの全てを歌詞に置き換えようとしてしまう。曲を作るためにいろいろな場所へ出かける。本を読むことも、雨の音を聞くことも、映画を見ることも、おいしい食事を取ることも、大嫌いな病院へ行くことも、全部歌のためなのだ。時々それが苦しくなる。私は純粋なマゾヒストにはなれないのだろう。だけど、そんな思いは1本のライブで完全に吹き飛んでしまう。