サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会は4日、フォルタレザなどで準々決勝2試合が行われ、ともに「10番」を背負ったブラジルのネイマール(22)とコロンビアのハメス・ロドリゲス(22)のエース対決が注目された南米決戦は、地元ブラジルが2-1で制し、優勝した2002年日韓大会以来3大会ぶりにベスト4に進出した。だが、ネイマールは試合終了間際に背後から相手の飛び膝蹴りを受けて脊椎(せきつい)を骨折。全治4週間の重傷を負い、今後の出場は不可能となった。一方、全力を出し切っての敗退にロドリゲスは男泣き。大会の“華”2人のW杯が終わった。
前日にネイマールが「戦争のような試合になる」と予測した通り、注目の大一番は激しさを極めた。両チーム合わせてファウルは54回(ブラジル31、コロンビア23)にも上り、試合は互いのエースをなりふり構わずつぶし合う展開となった。受けたファウルはロドリゲスが6、ネイマールが4で、ともにチーム最多。W杯史上、「10番」を背負った選手は常に厳しいマークにさらされる宿命が如実に表われた試合だった。
■厳しいマーク
ネイマールにはコロンビアのMFサンチェスがマンマークでぴたりとついた。そして、2-1のリードで迎えた後半41分だった。ネイマールが相手CKのこぼれ球を足元に収めようとした瞬間、背後からジャンプして当たりにきたコロンビアのスニガの右膝が腰を直撃した。ピッチに投げ出され、苦痛に表情がゆがんだ。そのまま立ち上がれず、手で顔を覆ったまま担架で運び出された。ブラジルのスコラリ監督は「ネイマールは痛みと悔しさで泣いていた。だれが標的にされているかは明白だったので、全員にマークを分散させるようにしろと言っていたのだが…」と顔をしかめた。
診断したチームドクターは、選手生命を左右するような大けがではないとしながらも「手術の必要はないが、プレーできない」として今大会の出場は不可能との見解を示した。チームメートのフッキは「彼の分まで走らなければいけない。チャンピオンを目指して戦い、タイトルを彼にささげたい」と語った。
■敵すらも敬服
ロドリゲスは無情にも試合終了の笛が鳴ると、しゃがみ込んで泣き、「男でも泣くときはある。今はすごく悲しい」と声を詰まらせた。試合では、ブラジルのMFフェルナンジーニョの執拗なマンマークを受け、瞬間的にマークを外すと四方から激しいタックルを浴びせられ、リズムに乗れなかった。被ファウル数はネイマールより多く、地面をたたくなど、いら立ちを隠せなかった。
少年時代、日本の人気サッカー漫画「キャプテン翼」に魅了されてサッカーに熱中したロドリゲスは14歳でプロデビュー。2010年に移籍金500万ユーロ(約6億9000万円)で移ったポルト(ポルトガル)でリーグ3連覇を支え、昨年は9倍となる4500万ユーロの移籍金でモナコ(フランス)へ活躍の場を移した。今回の大活躍で大会後のスペイン移籍も噂されている。
試合後、ブラジルのダビドルイスがロドリゲスを指さして約6万人の大観衆に拍手を求めた。敵すら敬服させる逸材に、コロンビアのペケルマン監督は「彼は、まだこれからだ」とさらなる飛躍を望む。ロドリゲスは「残念だったけど、いい経験になった」と4年後を見据えた。