それでも種田さんは一枚一枚の絵の中の光、物の質感、色、模様、人物との絡み方など、多岐にわたって追求し完成度を高めることに邁進(まいしん)した。
「どのカットを見ても、そこに自分がいるという感覚です。だからストーリーの本筋とは関係ないところで、自分の仕事を垣間見る瞬間があるとグッときます。こういう経験は実写だけやっているとなかなか得られませんし、アニメを経験できて本当によかった」と話す。
映画の世界を実写映画のセットのように創り上げた「思い出のマーニー×種田陽平展」(江戸東京博物館)においても種田さんは監修と美術監督を手掛けた。
「映画の中にあったものを現実の世界に引きずり出してくることには自信もありましたし、僕にしかできないのではないかと思っていました」
会場には背景画がアニメの世界を具現化した空間に飾られている。中でも「マーニー」が実在したのではないかと思わせる「マーニーの部屋」に置いてある日記は種田さんの作品づくりの神髄を見ることができる。