日本人観光客にも人気のロンドンのナイトライフが大きく変わろうとしている。全面禁煙と若者のビール離れにより、すでにパブは激減を余儀なくされているが、今度は当局の取り締まり強化によって、ナイトクラブの数が減り出したのだ。新規の出店はほとんど認められず、ささいな理由で営業許可の更新が止められている。警察や自治体は騒音の苦情などを理由にあげているが、以前は見逃されていただけに説得力はない。民族的マイノリティーや社会的に孤立しがちな人たちの交遊の場としても機能しているナイトクラブに監視の目を光らせるのは、治安・テロ対策の一環ともみられている。
■ケンカで営業停止
ロンドンでは今、2つの有名ナイトクラブの存続問題が注目されている。1つはケンジントン地区にあるナイトクラブ「ボージス」だ。
ボージスは、英王室のウィリアム王子(33)とヘンリー王子(31)がかつて足しげく通った店として知られる会員制のナイトクラブで、ウィリアム王子はまだ婚約する前のキャサリン妃(34)ともこの店でよくデートを楽しんでいた。
英紙デーリー・テレグラフなどによると、地元警察と風俗店の営業許可を出す地区の評議会は16日、ボージスに対して4週間の営業停止を命じた。その後の営業許可も協議の上、出すか否か決めると通知した。理由は、今月6日に店内で起きた2グループの客のケンカだった。
実はボージスでは昨年10月にも客同士の乱闘があり、2週間の営業停止処分を受けていた。営業再開後も終夜営業は禁止され、午前2時閉店と21歳未満の入店禁止を命じられた。しかし、営業再開後の4カ月で1万5000人以上の客を集めるなど、有名店としての地位を保ってきた。ボージスの関係者は「以前はこの程度では営業停止なんてあり得なかった。今月のケースだって、常連客同士の“にらみ合い”程度。何かの基準が変わり、狙い撃ちされていると感じる」と不満をもらしている。
■レゲエに警告
もう1軒は、クロイドン地区の「ダイス・バー」だ。ジャマイカのレゲエを中心にカリブ海の音楽を流す店として有名で、民族的マイノリティーが仲間と会うのを楽しむ場所でもあった。それが先週、警察当局から「犯罪に結びつくような音楽を流すことは受け入れられない。改善しなければ営業停止とする」と警告されたという。
音量を落とし、音楽もがらっと変えたが、今度は客から反発を食らい、客足も遠のいた。店長は「商売あがったりだ。閉店も考えなくてはならない。当局の言い分には人種的偏見すら感じる。騒音の苦情だって以前は大目に見てくれたのに、今さら何を言い出すのか」と憤りを隠さない。近くのナイトクラブは最近、店内で携帯電話の盗難事件が起きただけで営業停止になったという。
ロンドンをはじめ英国全土では、07年の全面禁煙でパブが減り出し、08年のリーマン・ショックに伴う不景気で家飲みをして節約する人が増え、さらに減少が加速した。30年前には6万8000軒ほどあった英国のパブは、現在では約4万5000軒にまで減っている。
理由と背景は違うが、パブに加えてナイトクラブまで減少の一途となれば、英国流の夜の遊び方が危機に瀕(ひん)しているといっても過言ではない。ロンドンファンは日本にも多い。寂しさを募らせているのは英国人だけではない。