【試乗インプレ】歴代のロータリーがずらり マツダミュージアム見学記 エンジンの巻

 
コスモスポーツに搭載された、世界初2ローターエンジン。マツダミュージアム

 前回に引き続き、マツダ広島本社工場に併設されたマツダミュージアムの見学記をお送りする。今回の主役は自動車産業の基幹技術であるエンジンだ。マツダのエンジンと言えば、やはりロータリー。車両展示室に続いて案内されたエンジン展示室には、歴代のロータリーエンジンがずらりと並んでいた。(文・写真 小島純一)

 ロータリーエンジンとは

 レシプロエンジン(通常のガソリンエンジン)やディーゼルエンジンは円筒の中でピストンが上下運動を繰り返すことで動力を生み出すのに対し、ロータリーはまゆ形断面の筒の中をおむすび型のローターが偏心回転しながら循環することで動力を生み出す仕組みのエンジン。

 レシプロエンジンとの比較では、排気量が同等ならより小型で、出力が高く、低振動・低騒音などのメリットがある半面、燃費が悪かったり、低速トルクが細くゴー&ストップの多い市街地での走行には不向きというデメリットもある。

 マツダの看板技術に

 1964年、世界で初めて量産・市販化に成功したのは西ドイツのNSU(アウディの前身)。マツダはNSUからの技術供与を受け、1967年に伝説の名車コスモスポーツでロータリーエンジンをデビューさせる。

 NSUがVWグループに吸収されたのちロータリーエンジンから撤退したのに対し、マツダは独自で研究開発と改良を重ね生産を続けた。ロータリーエンジンは他の方式に比べて高性能を実現しやすいことから、日産、トヨタ、ダイムラーなどいくつかの自動車メーカーが研究開発に取り組んでいるが、1970年代以降、40年以上にわたり継続してロータリーエンジンを量産したのはマツダただ1社である。

 と思っていたら、近年になって旧ソ連の国営自動車メーカーVAZ(ヴァース)もロータリーエンジンを搭載した車種を量産していたことがわかってきた。しかし、これらのエンジンはマツダやNSUなど西側メーカーの技術のリバースエンジニアリング(つまり高度なパクリ)で作られたもの。だから公にされず、長らく知られることがなかった。したがって独自技術とは言えない。

 マツダではコスモスポーツ以後もファミリア、ルーチェ、カペラ、サバンナRX-7などに次々搭載、熱烈なファンを増やしつつ、看板技術として脈々と受け継いでいった。

 世界の頂点を極めるも現在は…

 市販車のみならず、モータースポーツでもロータリーエンジンは活躍。1991年、4ローターのレース専用エンジンR26Bを搭載した787Bが、ル・マン24時間レースで優勝。今日に至るまで、同レースを日本のメーカーが制したのも、ロータリーエンジン搭載車が優勝したのもこの時だけである。

 フォード傘下で経営の苦しい時期にあっても、観音開き4ドアスポーツの意欲作RX-8に搭載するなど、技術の維持・継承を図ったが、2012年のRX-8生産終了以降、現在は搭載車種ゼロとなっている。

 2015年の東京モーターショーで発表されたRX-VISIONは「ロータリースポーツコンセプト」と位置付けられ、近い将来マツダのロータリーエンジンが復活するのでは、とクルマ好きの期待を集めている。今年のモーターショーで何がお披露目されるのか、楽しみに待つことにしよう。

 車種を減らしてでも品質を世界レベルに

 ロータリーエンジンの次に案内されたのはスカイアクティブ関連の展示室。現在のマツダの看板技術である。

 スカイアクティブとは個々の技術を指した名称でなく、エンジン、トランスミッション、シャシー、ボディなどクルマを構成する基幹技術の総称。個々の技術の内製化を進めることで高度な連係を図り、結果としてクルマの基本的な性能・品質を高めることを意図している。

 トヨタをはじめ、ダイムラー、VW、フォードなどとはマツダでは企業規模が大きく異なる。そこで、あえて車種を減らす代わりにこのスカイアクティブ技術を水平展開して品質を底上げ、全ての車種の水準をグローバルレベルに高める方向に舵を切ったわけである。

 基幹技術が内製されているから改良のピッチも早く、他メーカーでは2~3年サイクルで行われる改良(マイナーチェンジ)も、ここ数年のマツダでは1年以内の短いサイクルで頻繁にリリースされることが多くなった。

 展示室では初代のCX-5を構成するスカイアクティブ技術が組み立て前の状態、つまりバラされて展示されているほか、開発過程の外観・内装のクレイ(粘土)モデルや、衝突実験でボンネットが潰れた実験車を見ることもできる。

 以上、かけ足でお送りしてきたが、一般見学者が入らないお昼休みの1時間で見て回るには垂涎モノの“誘惑”が多すぎて、とても時間が足りなかった。写真を撮るので精一杯で、案内してくださった広報担当の方にもろくにお話を聞く余裕もないくらい。とにかく見どころ満載の充実した博物館である。見学の際は今回と前回の見学記を参考に、あらかじめいくつかターゲットを絞って訪問することをおすすめする。

 見学申し込み

 マツダミュージアムの見学は、個人、グループのほか、教育機関や企業などの団体、誰でも無料で見学可能。完全予約制でインターネット、または電話で受け付けている。

 詳しくはこちらへ(←クリックでマツダミュージアムのページが開きます)。