【試乗インプレ】体重140キロのお笑い芸人とトヨタの新型「ヴォクシー」でアウトドア(前編)
トヨタ自動車の超人気ミニバン「ヴォクシー」「ノア」「エスクァイア」の3兄弟が、7月3日にマイナーチェンジを施した。アウターデザインや室内装備を改良したほか、操縦安定性や乗り心地、静粛性にも磨きをかけているという。今回は筆者が一番気になる「ヴォクシー」のハイブリッド車(HV)に試乗。前編ではドライブフィールをチェックする。体重140キロのお笑い芸人を連れて“仕事を兼ねた”バーベキューにいざ出発!(文・写真 大竹信生/SankeiBiz)
ダメ元でトヨタに電話
2014年1月に発売された3代目ヴォクシーが3年半の時を経て小改良を行った。ヴォクシーといえば3兄弟の中でもスポーティーで“やんちゃ”なイメージの強い人気車種。今回は2列目に独立型の「キャプテンシート」を採用した7人乗りの最上位モデル「ハイブリッドZS」に試乗した。
7人乗りのミニバンに1人で乗ってもなんだか味気ない。大人数での乗車を想定して作られたクルマなら、それなりに車両が重たい状態で試してみたいと思うわけだ。かといって、平日の試乗にいい歳をした大人がそう何人も集まるはずがない。「だったらアイツを呼ぶのが手っ取り早いかも」-。もしかすると、一部読者は覚えているかもしれない。ダイハツ「ウェイク」の試乗に登場した浅井企画所属のお笑い芸人、杉渕敦のことを…。彼は私の後輩であり友人でもあり、体重が何と140キロもある。そんな彼なら“一人二役”をこなせる。筆者と2人で大人3人分(場合によっては4人分)に相当する効率のいいヤツなのだ。今回のロケにはうってつけの人材。こうなったら早速、彼にLINEだ。
筆者「今度クルマのロケできる? 車種はヴォクシー。河原で肉でも焼こうよ」
杉渕「いけます! バーベキュー、最高です!」
筆者「じゃ、お前の出演をトヨタに許可取ってみるわ。ダメだったらゴメン」
ダメ元でトヨタ広報部に電話してみる。なぜなら、トヨタ自動車といえば何となく「お堅い」「まじめ」といった印象が個人的にあり、向こうからすれば企業イメージというものもある。で、気になる答えは…。
トヨタ広報部「クルマのことをちゃんと書いていただけるのであれば、特に問題はないかと思います」
トヨタさん、マジ『神』…。 これならヴォクシーの魅力を存分に引き出せそうだ。
P社は悪くないんです
ロケ当日。筆者は出発前に一つ確認したいことがあった。
筆者「ブチ、お前の事務所のプロフィールに『体重140キロ』って書いてあるけど、本当はもっと重いんじゃないのか? もしかしたらサバ読んでるだろ! 産経読者の皆さんにウソをつきたくないから、今すぐ体重計に乗ってみろ!」
杉渕が体重計に乗ると…ピピピピ、測定結果が出た。
『U15』
杉渕「大竹さん、『U15』ってなんすか? 日本代表ですか?」
P社の取説を見ると…「U15と表示される」→「考えられる原因:体重が136キロを超えている」→「処置:ご使用できません」
杉渕が19歳のときに知り合ったので彼とは10年以上の付き合いになるのだが、当時は100キロくらいしかなかったような気がするのだが…。まあいい、クルマに乗ろう。
いざ試乗! 巨漢を乗せての走りはいかに
杉渕が助手席に収まる。グググッ-。「ブチ、いまマジでクルマが結構沈んだわ」。そんなことはお構いなしに、杉渕は2色使いの内装に感動する。「うわ、お洒落ですね! ブラックとオレンジがカッコいいなー」。確かにオレンジ色の強烈なアクセントが内装のポイントとなっていてクールだ。
彼が軽の「ウェイク」に乗ったときはシートから体があふれ出し、アームレストが今にも折れそうだったが、ヴォクシーは大きな問題もなさそう。彼の巨体に巻き付いたシートベルトは、外側から大きく回り込むようにバックルに収まっている。
目的地の河原に向かって走り出すと、あまりの静かさに「あれ、もうエンジンかかっていたんですか?」と驚いた様子。「まあ、走り出しはモーターなんだけど、すごい静かだよね」と2人で感心する。
車内は2人合わせて体重215キロ。バーベキューの道具や食材も積んでいるため、1.8リッターエンジン+モーターの組み合わせでは、さすがに軽快な走りとはいかない。
筆者「前に3人で乗っている計算になるので、どうしても“フロントヘビー”になっちゃうね。前が鈍い感じがするし、『エコモード』だと踏んであげてもエンジン音が苦しそう」
杉渕「確かに辛そうですね。(大声で)ヴォクシー、申し訳ないです!!」
ちなみにスタート時はモーターで発進し、通常走行時はモーターとエンジンを効率よく併用。加速時はエンジンをメインにモーターがアシストする。減速時は車輪がモーターを駆動して発電し、エネルギーを効率よく回収してバッテリーに充電するといった仕組みだ。
足回り、静粛性…どれもイイね!
足回りの味付けはやや硬めの印象。フワフワすることも、ピョンピョンと跳ねることもなく、ノッポの車体にはちょうど良い硬さ。ハンドルの操作感覚もミニバン向きの程よい柔らかさがある。これよりもシャープさが増すと、動きが神経質になってしまうだろう。カーブを曲がったときは車体にソリッド感があり、ボディ剛性の高さに安心感を覚える。ショックアブゾーバーを改良したということもあり、想像以上の乗り心地だ。15インチタイヤを履くモデルもあるが、個人的には試乗車に装備された16インチも車両と上手にマッチングしていると感じた。
高速道路に合流し、走行モードを「パワーモード」に切り替えてみる。当たり前だが出力が上がり、エコモードよりも余裕が出てくる。とはいえ、追い越し車線を堂々と走るのは“場違い”な気もする。3兄弟の中ではスポーティーに振っているとはいえ、ここはミニバンらしく楽しくのんびりと走行レーンを走ろうじゃないか。
高速走行中に感心したことが2つある。まず、大きなボディの割には風切り音が少なめで、ロードノイズもそれほど気にならないくらい静粛性がしっかりしている。エンジン音が大きめに聞こえるときはあるが、車内での会話を邪魔するようなレベルではない。
もう一つは、直進安定性が非常に高いということだ。ボディサイズの違いなどもあるが、格上のアルファードよりも優れていると感じた。日産の新型セレナも安定感たっぷりでとても走りやすかったが、ヴォクシーがここまで綺麗なラインで走るとは正直驚いた。今回の小改良で空力パーツを追加したことも関係がありそうだ。
乗り心地は高速走行時も滑らかで、道路の継ぎ目やバンプでの突き上げ、路面のざらつきをできる限りカットする。時折のパワー不足や、ループ状のジャンクションでスピードに乗っているとやや不安はあるものの(速度を落とせばいいだけの話)、全体的に洗練されていて非常に気持ちのいい走りをもたらす。杉渕も「車内はかなり静かで、乗り心地もいいですよ」と満足げ。さらに「縦横に大きいフロントウインドーは開放感がありますね。天井も高さがあるし、スペースに余裕があって居心地は最高です」と、身長181センチでもまったく窮屈に感じない広々とした室内空間に感心しきりだ。
快適なドライブを満喫している間に目的地の河原に到着した。下は大小さまざまの丸い石がゴロゴロとしているが、SUVでなくてもゆっくりと走れば問題ない。ヴォクシーを止めてテールゲートを開け、荷物を積み下ろしたら、いよいよ楽しみにしていたバーベキューの開始だ。
おっと、今週はここまで。後編では内外装のチェック、巨漢・杉渕による使い勝手の検証(そして食レポも?)をお届けする。お楽しみに。(産経ニュース/SankeiBiz共同取材)
■杉渕敦(すぎぶち・あつし)
お笑いコンビ、オーストラリアのツッコミ担当。浅井企画所属。1985年生まれのB型。埼玉県越谷市出身。早稲田大学卒業。嵐の大ファン。趣味はつけ麺の食べ歩き。ディズニー年間パス所有。過去にダイエット番組のオーディションを通過するも、まさかの太り過ぎでドクターストップがかかった。
■主なスペック ヴォクシー ハイブリッドZS(試乗車)
全長×全幅×全高:4710×1735×1825ミリ
ホイールベース:2850ミリ
車両重量:1620キロ
エンジン:直列4気筒
総排気量:1.8リットル
最高出力:73kW(99ps)/5200rpm
最大トルク:142Nm(14.5kgm)/4000rpm
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:前輪駆動方式
タイヤサイズ:205/55R16
定員:7名
燃料タンク容量:50リットル
燃料消費率(JC08モード):23.8キロ/リットル
ボディカラー:イナズマスパーキングブラックガラスフレーク
内装色:ブラッドオレンジ&ブラック
車両本体価格:326万9160円(税込み)
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