韓国は指をくわえて見物…日中の「高速鉄道」受注合戦 実績なく焦りも

 
韓国の高速鉄道

 「日本・中国の海外高速鉄道受注…韓国は見物だけしているのか」。自虐的にも読め、鼓舞しているかのようにも解釈できる韓国経済新聞(日本語電子版)の社説の見出しだ。日本がインドのムンバイ-アーメダバード間約500キロの受注に向け前進し、中国もタイのノンカイ-バンコク-ラヨーン間(867キロ)で10月にも高速鉄道の工事を開始することへの焦りでしかない。だが、韓国は動力車について国際標準として通用する高速鉄道方式を導入していないため、日中の“受注合戦”を指をくわえて見物するしかないのが実情なのだ。

 世界の潮流から逆行する動力車の方式がネック

 日印両政府は7月20日、インド西部のムンバイ-アーメダバード間を結ぶ高速鉄道計画について、共同事業性調査結果をまとめた。日本政府の説明によれば、日本の新幹線技術を推奨しているという。最高時速320キロ、最短2時間7分で結ぶとしており、現行の在来線特急(約7時間)に比べ大幅に短縮される。日本の新幹線が採用する、客車も動力車とする「動力分散方式」や、日本式の信号システムの採用を勧めている。

 だが、中央日報や韓国経済新聞などの韓国メディアによれば、韓国政府にとって、この「動力分散方式」こそが高速鉄道の海外輸出のネックになっているというのだ。今や世界各国は各車両ごとにエンジンや電気モーターのような動力源がある「動力分散方式」列車を導入する傾向にあるが、韓国政府は前後の2車両だけに動力源を搭載した「動力集中方式」高速列車にこだわり続けてきた。

 動力分散方式の主な利点は、全車両に動力源があるため上り勾配(こうばい)での高速走行が得意であるうえ、日本の新幹線のように曲線区間が多くても、頻繁に加減速をすることが可能であるということ。ブレーキの利きも良いようだ。

 一方の動力集中方式は、分散方式に比べコストが安く、車両のメンテナンスにも労力を要しない点がメリットだった。ただ近年、集中方式が主流だった欧州諸国でも高速鉄道においては分散方式を採用する傾向にあり、フランスのTGVでも次機種は動力分散式を予定しているという。

 中国より早く高速列車を自主開発したのに…

 2004年4月に暫定開業した韓国の高速鉄道は10年11月、東大邱-釜山間の開業によってソウル-釜山間の京釜高速線がほぼ完成し、同区間は最速2時間18分で結ばれた。開業時から仏TGVの技術を導入をしており、今年4月には、ソウルと光州を1時間半ほどで結ぶ湖南高速本線が開通した。その韓国のジレンマは、中国より4年も早く、世界で4番目に高速列車を自主開発しながら、いまだ海外に高速鉄道輸出の実績がないという現実だ。

 仏TGVから技術を取り入れているため、動力集中方式に固執せざるを得なかった面はあるのだろう。だが、そのTGVですら改革に乗りだそうとしているのである。

 ようやく重い腰を上げたのが、鉄道車両や軍用兵器などを生産する現代-起亜自動車グループの「現代ロテム」である。韓国経済新聞によると、12年、同社は100%の国内技術で動力分散方式の列車を開発した。しかし、厚い壁が立ちはだかった。韓国国土交通部が安全点検義務を理由に商用化計画を先送りしたのである。高速鉄道の受注では韓国国内での運営実績が重要な評価基準になるため、国内で走ってもいない列車を海外で走らせることは、土台無理な話なのである。

 韓国経済新聞の社説はこう結んでいる。

 「発注→製作→試運転→本運転に最低48カ月かかるため、今から始めても2020年の西海線(華城松山-洪城)開通に間に合わせるのがギリギリだ。ひとまず動力分散式の列車発注でも実現すれば世界市場に出す『最低限の証明』にはなる。政府のいち早い対応を促す」

 そこからは「焦り」しか感じられない。

 同じ土俵に立てないいらだち

 そんななか、中国共産党機関誌・人民日報系のニュースサイト、人民網(日本語電子版)が「米高速鉄道の受注競争 中国と日本のどちらが有利か」と、韓国の感情を逆なでするような記事を掲載した。

 米国では今年1月、初の高速鉄道プロジェクトとなるカリフォルニア高速鉄道が着工された。まだ、どの国が車両、システムなどを請け負うが正式に決まっていないが、2029年にはサンフランシスコとロサンゼルスが約2時間半で結ばれる予定だ。

 人民網は、中国と日本が近年、高速鉄道の国際建設と関連設備の輸出市場での競争を激化させていると指摘。そして「(中国は)日本というライバルがもたらす強大な競争圧力を克服しなければならない」と強調している。

 実績のない韓国に触れるはずもない。韓国は、日本と中国という東アジアの経済大国と同じ土俵に立てないことにいらだっているに違いない。