都心部商業地の地価上昇 訪日外国人消費が押し上げ寄与
今年の都道府県地価(基準地価)では、景気回復期待や低金利による良好な資金調達環境が続いたことから、都心部を中心に商業地の地価が大きく上昇した。中でも押し上げに寄与したのが訪日外国人の増加だ。16日に発表された2015年1~8月の訪日外国人旅行者は過去最高のペースで推移。“爆買い”や観光需要の急増が地価上昇を加速させている。
東京・銀座のラオックス銀座本店は、高級ブランド品から家電製品までそろえる総合免税店だ。観光バスから吐き出された中国人が次々と店舗に吸い込まれ、平日でもフロアはごった返している。帰りのバスを待つ歩道には、炊飯器やデジタルカメラ、日用品などをぎゅうぎゅうに詰め込んだ「LaOX」マークの紙袋が所狭しと並び、中国人による爆買いの勢いを実感させる。
商業地は「金融緩和マネー」の流入により上昇または下落幅が縮小する傾向が顕著だ。特に三大都市圏の商業地は上昇基調を強めており前年比2.3%上昇。上げ幅は昨年(1.7%)から拡大した。都心部の商業地では「訪日外国人の急増で店舗需要が高まっている」(国土交通省の担当者)ためだ。
東京圏では、港区表参道の商業地が20.2%上昇した。ファッションブランドを中心とした集客力の高いテナントが集積し路面店の店舗需要が増加しているためだ。大阪圏でも、中央区心斎橋が29.7%と大きく伸びた。心斎橋周辺でも訪日外国人が増加しており、店舗の新規出店需要が高まり地価も上昇しているという。
また訪日外国人客による観光需要の増加が住宅地の地価上昇にも波及している。北海道倶知安町の住宅地は3.6%上昇した。隣接するニセコ町には海外からのスキー客が多く訪れるため、別荘地としての需要が拡大した。
こうした地価上昇は、緩和マネーの流入や訪日外国人の急増による要因が大きいため、「ミニバブルではないか」との見方も根強い。7月に中国・上海株式市場で株価が急落し、中国政府が人民元の大幅な利下げに踏み切った。こうした中国経済の変調も、国内の地価動向を読みにくくしている。
中国経済が訪日需要に与える影響について、田村明比古観光庁長官は16日の記者会見で「現在のところ、マイナスの影響は出ていない」と述べた。足元では増加する訪日外国人だが、“中国リスク”への懸念はぬぐえず、当面は中国経済の動向も地価を左右する大きな要因となりそうだ。
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