中国が資金流出に規制 海外のショッピング制限、爆買いに陰り?
高論卓説中国のバブル崩壊が話題になっているが、その陰で中国の外貨準備に対する懸念が生まれ始めている。中国の外貨準備は約3兆4600億ドル(約415兆円、8月末)と減少傾向が続くが、額面上は世界最高水準であり、何の心配もいらない。しかし、この中身と実際に使用できる額に懸念が生じているのである。
外貨準備とはキャピタルフライト(資金流出)に対する備えであり、通貨価値を維持するための保険のようなものである。国内から資金が流出する場合、自国通貨が売られ、ドルなど他国通貨に両替される。これが大規模に起きた場合、通貨の暴落が発生する。これを抑制するのが外貨準備であり、中央銀行などが他国通貨を売り、自国通貨を買うことで通貨の暴落を防ぐという仕組みである。
では、中国の外貨準備の何が問題なのかということになるわけだが、中国の場合、外貨準備における米国債の割合が非常に低いのである。中国の保有する米国債の額は約1兆2400億ドル(7月末)であり、外貨準備総額の約3分の1しかない。日本の場合、外貨準備約1兆2400億ドル(8月末)に対して、そのほとんどが米国債であり、中国の状況はこれと大きく異なる。
また、日本の外貨準備は政府と中央銀行の純資産であり、全額介入に使うことができるが、中国の場合、国有銀行保有分なども含まれているとされており、企業などが預けている決済用資金も含まれている可能性が高く、実際にどの程度使えるかが分からないのだ。外貨準備とはあくまでも外貨をいくら保有しているかであり、借り入れであろうがその性質を問うものではない。
この懸念を証明するかのように、中国当局は外貨流出阻止に躍起になっている。まずは通貨先物取引を規制し、そして、ついに中国人観光客が海外で使う外貨にも規制をかけ始めた。中国の場合、個人の両替は年間5万ドルまでとなっているが、実はこの規制は、中国で大きなシェアを持つ銀聯カードを利用することで回避できた。
銀聯カードは厳密に言えば、クレジットカードではなくデビットカードと呼ばれるもので、利用時に即時に銀行口座から引き落とされる仕組みにになっている。このため、銀行口座の残額が限度額のようなものであり、中国国内の銀行口座にお金があれば、海外で自由に外貨を引き出せたのであった。このため、中国国内の両替規制は有名無実化していた。
ついに10月1日、中国は銀聯カードを使った両替に対して、年間10万元(約190万円)という規制(移行措置として10月から12月までは5万元)をかけた。なおショッピングは無制限だが、今後、ショッピングも規制する可能性が高いとされる。バブル崩壊と両替規制強化により、今後、中国人の海外での爆買いは徐々に減少すると思われ、日本の観光業やサービス業への影響も懸念される。
【プロフィル】渡辺哲也
わたなべ・てつや 経済評論家 日大法卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。著書は「突き破る日本経済」など多数。45歳。愛知県出身。
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