焦る中韓… 日本、FTA主導へTPP基準で攻勢 3カ国首脳会談
1日開かれた日中韓首脳会談の共同宣言には、停滞している3カ国のFTA交渉を加速する方針が盛り込まれた。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意で焦りがにじむ中国に対し、日本は日中韓など他のメガ(巨大)FTA交渉にTPP基準の先進国ルールを取り込む狙いがあり、韓国を加えた三つどもえの交渉を思惑通り主導できるかが課題となりそうだ。
安倍晋三首相は会談終了後の共同記者会見で、「包括的かつハイレベルな協定を早期に妥結すべきだ」と述べ、日中韓FTA交渉の合意に期待感を示した。
日本の貿易相手国として中国は首位、韓国は米国に次ぐ3位。輸出入総額に占めるシェアは中韓合わせて約26%(いずれも2014年)を占め、自由化を進める利益は大きい。ただ、関税撤廃に向けた交渉の枠組み自体がまとまらず、合意の見通しは立っていない。
こうした中、TPPの大筋合意が潮目を変えつつある。韓国は日本との輸出競争で劣勢に立たされるとの危機感から「TPPに参加する方向で検討する」(崔●煥・経済副首相兼企画財政相)と前のめりだ。
一方、中国はTPPが規定した国有企業への優遇禁止などが障害となり、参加は当面難しいとの見方が強い。しかし、日韓がそろってTPPに参加すれば「中国は米国中心の貿易秩序に対抗するため、日中韓FTAにより前向きになる」(日本政府筋)との指摘もある。
日本はTPPを「事実上の世界基準」と位置付け、他のメガFTAでも先進国型の自由貿易ルールを軸に交渉を進めたい考え。実現すればチャイナマネーの“ばらまき”を背景に自国のルールを押し付けようとする中国の経済的覇権の拡大を抑止する効果が期待できる。
ただ、歴史問題などで中国と歩調を合わせる韓国の朴槿恵政権を加えた3カ国の交渉は、今後も難航が予想される。日本は厳然とした対応を貫けるのか、交渉のかじ取りで苦慮しそうだ。(田辺裕晶)
●=日の下に火
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