OPEC、減産見送り 歯止めかからぬ原油安、経済成長戦略にも影

 

 原油安が続く中、価格の調整役を果たすはずの石油輸出国機構(OPEC)は4日のウィーンでの総会で原油生産目標の設定を棚上げし、現行の高水準の生産を容認、減産を見送った。原油市場では、需要を牽引(けんいん)してきた中国経済の減速を踏まえ、過剰供給が長期化し、価格低下に拍車がかかる懸念が強まっている。歯止めがかからない原油安は、燃料輸入国の日本の成長戦略にも影を落とす。

 原油収入に依存する加盟国の財政状況は厳しく、総会では一部の国が減産を訴えたものの、シェアの確保を優先させたいサウジアラビアなどが対立して合意できなかった。

 OPECのこれまでの目標は日量3000万バレル。ただ、10月の生産量が3138万バレルで、目標は形骸化していた。シェア争いを続けている米国の新型原油「シェールオイル」の生産が効率化に伴い、高水準で推移していることなどが背景にある。声明文に結束を示す生産目標は明記されなかったが、総会議長を務めたナイジェリアのカチク石油資源相は記者会見で「現在の生産レベルを維持する」と強調した。

 原油安、日本の脱デフレを左右

 国際指標の米国産標準油種(WTI)は、昨年7月まで1バレル=100ドルを超えていたが、4日のニューヨーク原油先物相場はOPEC総会の結果を受けてWTIの来年1月渡しが1バレル=40ドルを割り込んだ。

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミストは「生産目標を明記しなかったことで、加盟国がよりシェアを取りに行く姿勢が明確になった。冬の需要期の峠を越える来年1~2月にかけて、WTIは35ドル前後に下がる可能性がある」と述べ、原油価格の一層の下落を予想する。

 過剰生産を放置するとのメッセージを市場に送ったに等しいOPECが直面するのが新たな供給増への懸念だ。

 主要加盟国であるイランは、欧米などの経済制裁が来春にも解除されれば輸出を増やす方針。生産量は現在、日量290万バレル前後だが、50万バレル程度引き上げる。市場では、原油確認埋蔵量で世界4位のイランが完全復帰を果たすと、「さらなる下げ圧力になるのは決定的」(日系石油元売り大手)との見方が多い。

 対抗勢力のシェールオイルは、石油採掘装置(リグ)の稼働数を減らしても一定量を確保できるまで採掘の技術革新が進み、原油安の影響を受けにくい収益構造に転換。シェールオイル陣営が、囲い込んだ買い手を奪われかねない減産に踏み切る気配は今のところない。

 今月中旬にも実施の可能性がある米国の利上げも下押し要因だ。利上げすればドル高となり、ドル建てで取引される原油価格が下がる。

 世界経済は中国の景気が減速し、追加緩和の延長を決めた欧州も景気回復の遅れが懸念されている。石油需要は鈍化する傾向にあり、需給バランスの悪化が加速する恐れもある。

 ガソリンなどの燃料となる原油を輸入に頼る日本では、原油安は家計に恩恵をもたらす。ガソリンや灯油の価格は下げ幅を拡大し、電気料金も徐々に下がる公算が大きい。

 しかし、経済にメリットばかりではない。足元の物価を下げることになるため、日銀の2%物価上昇目標の足かせとなり、安倍晋三政権が目指すデフレ脱却が遠のく可能性も出てくる。「新三本の矢」で物価上昇を前提に強い経済の目標として掲げた名目の国内総生産(GDP)600兆円の達成にも影響を及ぼしそうだ。