中国メンツつぶし「核実験を見せつけてやる!」 北朝鮮が自信深めた3つの理由
北朝鮮が強行した核実験について、朝鮮労働党幹部らが住民らに「中国に見せつけるため」と説明していることが6日、複数の消息筋の話で分かった。金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は7日朝に事実上の長距離弾道ミサイル発射についても強行した。後ろ盾だったはずの中国のメンツをつぶしてまで、対外強硬路線に前のめりになる理由は何か。内部の状況からは、若き指導者が自信を深めた複数の要因が浮かぶ。(桜井紀雄)
「反米全面対決戦」の裏で…
「反米全面対決戦を総決算するため、全社会を金日成(イルソン)・金正日(ジョンイル)主義一色にしなければならない」。平壌で2~3日に開かれた党と朝鮮人民軍の拡大会議で金第1書記はこう強調した。核実験の名分にも「米の敵視政策」への自衛を掲げた。
半面、国内の集会などで、「われわれが最も警戒しなければならない国」と名指ししているのが中国だ。中朝関係者によると、幹部らは「中国は、覇権意識に染まって社会主義の原則を捨て、血盟(同盟)国であるわが国に核開発を禁じる圧力を加えている」とし、こうも述べたという。
「中国の思い通りにならないという断固たる意志を見せつけてやるために、元帥(金第1書記)の指示で水爆実験をやった」
金第1書記自身が「中国に譲歩するな」と側近に指示しているともいわれる。
中国側関係者は、再三の挑発にも穏健な姿勢を崩さない中国に対する「どんな行動を取っても安全だ」という見くびりが背景にあり、「中国が制裁で原油供給を断っても、完全に中断することはない」との楽観があると指摘する。
自活可能? 「農業改革成功」を過信
貿易の9割を中国が占める現状にあって経済の維持が本当に可能なのか。
「最高生産水準を突破した」。北朝鮮メディアは昨年末、ジャガイモの産地の北部、慈江道(チャガンド)の収穫高についてこう宣伝した。
正恩政権は2012年に「6・28措置」と呼ぶ経済策を打ち出し、農業改革に取り組んできた。取れ高の一定割合を農民が自由に扱えるようにし、生産意欲を鼓舞するのが狙いだ。
昨年、一部地域では実際に収穫量の7割が農民に渡ったとされ、さんざん政権に裏切られてきた農民の間で、「元帥が約束を守った」と驚きをもって受け止められたという。
一方で、昨年、「100年に1度」といわれた干魃(かんばつ)に見舞われ、韓国政府は、穀物生産量が前年比6・3%減ったと推定している。それでも、「農業改革は成功している」といった景気のいい報告から、金第1書記が、国際的に孤立しても、自活は可能だと判断したとみても不自然ではない。
超強硬派が対外交渉役に昇任
4日付党機関紙、労働新聞は、会議の席上、紺の人民服姿で金第1書記のそばに座る金英哲(ヨンチョル)氏を写した写真を掲載した。対北情報筋は、昨年末に事故死が発表された金養建(ヤンゴン)氏に代わって、対韓政策を統括する党統一戦線部長と書記を兼務したとの見方を示した。
英哲氏は、工作機関の偵察総局長を務め、10年の韓国哨戒艦撃沈や延坪島(ヨンピョンド)砲撃を主導したとされ、韓国当局が「超強硬派」と目する人物だ。金第1書記の暗殺を描いた米映画会社に対して14年にサイバー攻撃を仕掛けたとも指摘されるほか、昨年8月には、南北の軍事的緊張を高めた非武装地帯(DMZ)での地雷設置にも関与したとされる。
相次ぐ挑発で外交的な亀裂を招いたとして本来、問責されるべき人物が、対外交渉を担う最側近の地位を固めたことになる。
ミサイル発射通告に対し、北朝鮮を擁護してきたロシア政府でさえ、「近視眼的な行為の代償を考慮すべきだ」と警告した。しかし、親中路線を進めた叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑し、対話派とされた養建氏も死亡した。その直後の強硬派の重用は、周囲が対話を進言する環境が失われ、金第1書記が強硬路線堅持を宣言したことを意味している。
関連記事